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2005年3月16日(水)
20.トルコでショッピング その2

 トルコと言えど、もちろんフィックス・プライスの店もある。その代表がショッピング・センターやスーパー・マーケットである。
 私はスーパー・マーケットが大好き。それも郊外にできた、大手チェーンのマーケットに行くのが、特に好きである。
 確かにバザール(週に一度くらいの割で住宅地に店を並べる、青空市場みたいなもの)などよりは物の値段は断然高いが、食料品や生活用品までとにかく品数が揃っているので、カートを押しながらその一つ一つを丹念に見ていく。
 いくらでも時間は潰せるし、全然飽きない。
 また、現金を持っていないときでも、クレジット・カードが利くので便利である。

 ところが、クレジット・カードを使うとき、必ずと言っていいほど、パスポートの提示を求められる。レストランやガソリン・スタンド、個人のショップではまずパスポートの提示を求められることはない。なぜかスーパー・マーケットに限ってなのである。

 一度その理由を店員に訊いてみたことがあるのだが、
「決まりになっているから」
 というだけである。
「その決まりは何のためなんだ?」
「わからないけど、決まりだから」
「もしかして、悪いヤツがカードを偽造して、買い物をしていると思うからか?」
「たぶんそうだと思うけど、わからない。とにかく決まりだから」
「レストランやガソリン・スタンドではパスポートを見せろとは言われないけど、そういうところには悪いヤツらは行かないのか?」
「行くと思うけど、ここはスーパー・マーケットだし、私はマネージャーにそうしろと言われているだけだから」
 及川も相当意地が悪いが、相手も引かない。

 もちろん以上のようなことを会話できるほど、私はトルコ語に堪能ではない。一緒に行ったうちのトルコ人が通訳してくれているのだが、
「カードを偽造するような悪人が、こんな物を買っていくと思ってんのか!」
 途中で彼が怒り出してしまった。
 買い物カゴには、日本へのお土産用に買ったチョコレート・ケーキ(1つ120円くらい)が20個である。捕まるのを覚悟でやったことなら、あまりにもセコすぎる。
 結局、パスポートはちゃんと提示した。提示する意志はあるけれど、ちょっとからかってみたかったというのが、及川の本音である。まさか彼が怒り出すとは思っていなかったが。

 しかし、一度。スーパー・マーケットに行き、いざ支払いという段になったときパスポートを家に置いてきたことに気付いた、ということがあった。
 IDカードでもいいよと言われても、日本人はIDカードを持っていない。
 仕方がないので、運転免許証を差し出した。インターナショナル・ドライバーズ・ライセンスではない。東京都公安委員会が発行した、日本国のみで通用する運転免許証(だから、全部日本語表記)である。

 店員はそれを見て途方に暮れている。
「私、日本語読めないし…」
 大丈夫、これは立派なIDカードだよ。ほら、これが名前で、ここには生まれた場所の住所。ここにはお父さんとお母さんの名前が書いている。で、ええっと…、血液型はどこに書いていたっけなぁ。
 嘘八百を並べ立て、と言うよりは、自分自身日本語が読めないうちのトルコ人が適当に説明しているだけ。それをまた物見高いトルコ人たちが私たちの頭の上から、
「おおっ! これが日本人のIDカードか。わしゃ初めて見たぞ」
 というような感じで覗き込み、ああだこうだと言っている。

「一応マネージャーに訊いてきます」
 彼女はそう言って事務所に行き、約10分後、OKでしたと戻って来た。そして、ニッコリと微笑みながら、
「日本語って難しいですねぇ」
 と一言。
 彼女が事務室に行っている間に、レジを待つ客で長蛇の列。しかし、誰一人として怒る人はいない。気長な人たちである。
 こういうこともあるから、ショッピングは楽しい。

 ところで。よく人から、
「トルコの物価ってどうなの?」
 という質問をされる。
 基本的には、食べる物と住むところと労働賃金以外は日本より高いと言ってもいい。住むところも、場所によってはすごく高い。
 先日行ったときにも、洗濯石鹸を買ったところ、日本円で750円くらいした。で、それで何回くらい洗濯ができるのかというと、約40回である。めちゃくちゃ高くないか。

 うちのトルコ人の姪っ子が最近テキスタイル(要するに縫子)の仕事を始めたのだが、毎日朝8時半から夜の9時まで(日曜日はお休みで土曜日は半ドン)働いて、月給は約300ドル。
 それじゃあ収入と支出の割合が合わないじゃんと思うくらい、人々の生活は大変。日本人の私から見ても、住みにくい国である。

 というわけで、次回はトルコの物価の話でも書くか。




 
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