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2005年3月7日(月)
16.猫との愛の日々 その4

 個人の嗜好というものは、なかなか他人には理解しづらいものがあるようだ。
 たとえば、SMやロリコンなどのいわゆる性的嗜好。ノーマルな恋愛やセックスを好む人間にとっては、摩訶不思議と言うしかない嗜好である。
 そこまでメンタリティーなものじゃないとしても、人は様々な「好み」や「趣味」を持っている。

 私の知人に鉄道模型のオタクがいる。戦闘機専門のプラモデルのオタクもいる。そう言えば、サンダーバードの人形のコレクターなんてのもいたな。
 大抵は男である。女で収集癖がある人というのは少ないみたいだ。
 でも、コレクターじゃなくても、着物に凝っている人やガラス製品が好きで好きで仕方がない人。キティちゃんのグッズを見掛けると、つい買ってしまう人なんてのは結構いる。『冬ソナ』にハマったおばさんなんてのも、そういった嗜好の一種の変形だろう。

 私にはあまりそういうところがない。これじゃなきゃいけないとか、これだけは詳しい、これだけは人よりたくさん持っているというようなものがないのだ。
 …と思っていたのだが、あるとき友人に、
「眠子さんが同じ洋服を着ているのを見たことがない。よっぽど洋服が好きなんだね」
 と言われ、そういや私は洋服だけは好きだなぁと気付いた。着るものなんてどうでもいいや、と思ったことは一度もない。決して高い洋服ではないけど、季節ごとに新しいアイテムを取り入れているのは確かだ。普段着はユニクロだけどさ。

 見た目に惑わされるなという言葉があるけれど、それは逆を言えば、人はつい見た目に惑わされるということである。
 私の根性の悪さやルックスのみっともなさは洋服だけではカバーしきれないだろうけど、とりあえず見た目をちゃんとしていて失敗はない。

 ところで。
 猫にもそれぞれに嗜好がある。
 私の友人が飼っていた猫で、とにかく靴下が大好きという猫がいた。そこいらに靴下を放ぽっておくと、必ずボロボロになるまで囓られると言っていた。それも靴下に限ってだそうである。ほかの衣類や布製品にはにはほとんど興味を示さないらしい。

 うちのサジは「水遊び」が好きである。流しの洗い桶や底の浅い花瓶、そして自分の水入れに至るまで、溜まった水を見ると、それを前足で掻き出さずにはいられない。あたりは水浸しである。
 湯船に溜まったお湯を掻き出そうとして、滑って体半分湯船に落ちたこともある。それでもやめない。
 一度、私が飲もうと思ってグラスに水を入れてテーブルに置いておいたところ、その場を離れているあいだに、グラスの中に前足を突っ込んで、やっぱり水を掻き出そうとしていた。

 それ以降、絶対に水を放置することはしなくなった。でも、コーヒーやお茶だとさすがにそれはやらない。特にコーヒーは猫にとってはすごく臭いものらしくて、大嫌いである。
「ほれ、コーヒーじゃ。掻き出してみろ」
 鼻先にコーヒーカップを突きつけてやると、
「いやぁーん、くさぁい!」
 という感じで逃げて行く。
 また、誰かが入ったあとの濡れた風呂場や洗い物が終わったあとの流し、それに洗面台。そういうところで「コロンコロン」するのも好きである。
 風呂は大嫌いなくせに、濡れた場所や水自体は大好きなのである。

 もう一匹レンゲの方はと言うと、そういった癖はまったくないのだが、とにかく「新しいもの」が大好きである。
 たとえば、昨日から置いてある新聞よりも、今朝届いたばかりの新聞の方が好きである。今までにその場所になかったものの匂いを敏感に察知し、そしてその上にちゃっかりと座るのである。
 洋服でも着ていたものは興味がないが、買ったばかりのものや洗濯したてのものは大好き。そのまま放置しておくと、絶対にその上に座っている。
 衣類や紙類に限らず、新しいものはまずチェックをせずにはいられないみたいだ。

 新しいファックス機を買ったときも、その上で無理矢理寝ていた。また、真冬の夜。家の中でもいちばん寒い玄関で、買ったばかりのサンダルの上に寝ていたこともあった。
 宅急便が届き、その箱を開けていると、必ずと言っていいほど猫2匹が寄ってくる。買い物から帰って、スーパーの袋から食料品などを取り出しているときも、何があるんだろうと覗きに来る。
 猫とはもともと好奇心が強い性質であるが、レンゲほど新しいものに執着する猫もまた珍しい。

 ま、世の中には変わった趣味の人たちがいっぱいいる。それに比べれば、猫の嗜好なんて全然可愛いもんだけどな。




 
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