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2005年3月2日(水)
14.猫との愛の日々 その2

 猫を飼っていると、当然ながら金がかかる。エサ代にトイレの砂代、あとは年に一度のワクチン代くらいか。まぁたいした金額ではない。
 それよりも爪研ぎされてボロボロになった家具や壁紙、壊された陶器、何度もゲロを吐かれたお陰でめちゃくちゃ汚くなってしまった絨毯。これらを買い換えなきゃいけないときが怖いのである。

 それでも、うちの猫はまだまし。
 なぜかと言うと、ほとんど病気をしたことがないからである。
「腎臓に石が溜まっちゃって、その治療のために合計で200万円くらいかかったの」
「生まれたときから心臓に問題があったみたいで、今でも週に一度は病院に連れて行かなきゃいけないの」
 そういう話をよく聞く。

 親が生んだ中で強い子だけが生き残り、食べて寝て遊んで、そしてコテっと死んでいく。
 猫とは本来そういう生き物であるはずなのに、種類とか血統とかにこだわっているうちに、どんどん弱くなってしまった。と言うか、たとえ弱い子どもでも血統書さえ付いていれば、ペットショップは高値で売りに出すのだろう。

 また、今どきの猫はストレスもいっぱい溜めている。確かに、マンションの狭い一室にずーっと閉じ込められていれば、ストレスも当然さ。
 友人の話だと、猫のための鍼治療やアロマテラピーなんてのもあるらしい。
 病気の種類は人間並みだけど、人間と違って動物は保険が利かない。だから、治療代すべてが実費。ワクチンでさえ5000円かかるのである。週に一度病院に連れて行かなきゃいけないとしたら、その猫の病気が完治するまで、もしくは死ぬまで、いったいいくらの金がかかってしまうのだろう。

 それを考えると、うちの二匹の健康児に感謝感謝なのである。
 たまに元気がないときもあるけれど、たいてい次の日には復活。ずっと寝ている日もあれば、何だか興奮しているなぁというときもある。人間だって毎日同じ体調じゃないからね、当たり前のことなんだろう。

 しかし。もう4年くらい前の話になるが、夜中にふと気付くとサジの方が元気なさげにして、おまけにボタボタよだれを垂らしている。
 しばらく放っておいたのだが、よだれは止まることがない。

 今まで病気らしい病気をしたことがないので心配になってきて、タウンページで「夜間診療可」と書かれた犬猫病院を探し、家に近い順から電話をしてみた。時刻は夜中の2時過ぎである。
 どこの病院も一応電話には出てくれるが、
「原因はなんですか?」
 と訊く。わからないから電話してるんじゃないかと言うと、
「じゃあ、明日の朝イチで連れてきてください」
 夜間診療を掲げているくせに、夜間は診ないってのはなんなんだ。結局、広尾のダクタリ病院が、
「それは心配ですから、今すぐに連れてきてください」
 と言ってくれた。
 でも、今ちょっと診察しただけでは原因はわからない。明日改めてすべての検査をするから、このまま入院させてくれと言う。検査が終わったら、その結果をすぐ電話するからとのことである。

 そして、次の日。
「今、検査が全部終わりました。血液とか脳波とかにはまったく異常がないんですが…。ただ、レントゲンを見ると、ちょっと気になることがあるので、もう一日預かってもいいでしょうか?」
 この際だから徹底的に調べてもらった方がいいに決まっている。もちろん了解して、そのままサジを預けた。

 さらに、次の日。
 病院からまた電話がかかってきて、もう大丈夫だから引き取りに来ていいですよと言われた。

 病院に行き、2日ぶりにサジを見ると、この前の苦しさは嘘のように元気にしている。ああよかった。でも、いったい何が原因だったんだろう。そう思っていると、医者がレントゲン写真を示しながら、
「ほら。胃から大腸にかけて、ずっと黒い塊が写っているでしょう? これのせいで気持ち悪くて、元気がなかったんですよ」
 ほんとだ。黒い塊がボコボコ写っている。これはいったい何?
 思わず医者の目を見つめ無言で問いかけると、彼はおもむろに一言。
「便です」
 はぁー? 便、つまりウンコ。
 便秘が続いたせいで、そのウンコが胃を押し上げて、それで気持ち悪くてよだれを垂らしていたということらしいのだ。
「試しに浣腸してみたら、ものすごい量の便が出て、そのあとはすっかり元気になりましたよ」
 何だよーっ! でも、とりあえず快復してよかった、よかった。

 このまま連れて帰って大丈夫。あとは受付で診察料を払ってくれればいいだけで、もう病院に来る必要もないと言う。
 さて支払い。いったいいくらくらい必要なんだろうと不安になっていると、受付で名前を呼ばれ、笑顔のお姉さんに明細書を見せられた。
「まずこれが検査代です。そして、2泊の入院代金と時間外診察料金、消費税など、全部含めますと89250円になります」

 はちまんきゅうせんにひゃくごじゅうえん、だとぉぉぉ ! 
 ほとんど9万円である。しかも、ウンコに9万円。私が入院した方がましである。保険金下りるし。

 さらに、病院からの帰りに渋滞に巻き込まれ、長い道のり。緊張のあまりサジはずっと泣きっぱなし。とうとうこらえきれず、車の中でオシッコをしやがった。
 その掃除がまた大変だった。泣きっ面に蜂、というのはこういうことだとしみじみ思ったね。

 また、サジが元気になったのはよかったのだが、病院のにおいを付けて帰ってきたもんだから、もう一匹の猫レンゲがものすごく怯えてしまって、3日間ごはんも食べず、ずっと暗がりでうずくまって過ごしていた。

 愛がなきゃ、猫なんて飼ってられないよな。




 
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