及川眠子HOME
Diary INDEX


<<前のページ | 次のページ>>
2004年12月22日(水)
72.JINX

 私が書いたやしきたかじんの歌の中に『JINX』というのがあるのだが、先日その『JINX』が大好きで、ぜひ詞を書いたときの秘話みたいなのがあれば聞かせてほしいというメールをもらった。

 正直言って、多いときで年300曲以上書いてきたので、そのときに何を思ったかなんていうのはほとんど覚えちゃいない。
 ましてや私は職業作詞家だから、とにかく曲と歌手と内容さえ決まっていれば何だって書ける。言い換えれば、すべての作品において秘話やエピソードを持ち合わせないのが、私の詞の特徴でもある。

 ただ、この曲に関して覚えているのは、三度ばかり全面的に書き直しをして、結局はいちばん最初に書いたものが採用された、ということだ。
 曲を書いたのは都志見隆で、このときは曲が先にあって、それに詞をはめこむというかたちだった(今どきはほとんどそうだが)。

 作品が出来上がる過程というのは、通常ディレクターとマネージャー、それに歌手本人くらいしか知らなくて、かつて私も誰にも見せたことはないのだが、ちょっと面白いので、ボツになった詞を記してみようと思う。
 三回目に書いた詞は残念ながらどこかにいってしまったので、とりあえず採用されたものとボツになったものの二つだけ。

★ ★ 
         
JINX

明日こそはと また呟いて
つらいページにしおりはさむ
うしろめたさに背を向けた
あなたを見てると

泣ける気力もないくらい
疲れた暮らし ふと気付いた

愛はその夢のじゃまをすると
誰に聞いたジンクス
信じないで あなたをまだ
あきらめたくない

男の弱さ そっと抱きしめ
甘やかすのが私の癖
あなたがだめになりそうで
何だかこわくて

揺れる灯りの下 ため息で
別れの手紙書いたけれど

幸せに縁が薄いだけと
運命(ほし)も告げるジンクス
信じないよ 自分をまだ
決めたくないから

悪い縁起ばかりかついで
言い訳したくない

愛はその夢のじゃまをすると
誰に聞いたジンクス
信じないで あなたをまだ
あきらめたくない

★ ★

ありふれた恋も終わるときは

お願いだから 私より先
ねぇ幸せにならないでと
ふざけたようにつぶやいた
横顔見てると

あなた想うだけの優しさに
力はないと知ってしまう

ありふれた恋も終わるときは
特別にせつないね
思い出より遠い場所が
あるならいいのに

あなたの未来受け止めきれず
夢を選んだ男のエゴ
苦しむために愛したと
最後に微笑(わら)った

頬をこぼれてゆく涙さえ
まるですべてを許すようで

ありふれた恋も終わるときは
この胸に痛いよね
大事なものくれたからと
あなたは言うけど

そっとかけがえのない人が
腕をすりぬけてく

ありふれた恋も終わるときは
特別にせつないね
思い出より遠い場所が
あるならいいのに

★ ★

『JINX』が採用、『ありふれた恋も終わるときは』が不採用である。
 結局何がよくて何が悪くて採用不採用を決めたのかはわからないのだが、まぁ歌というのはもともと嗜好品であるから、いたしかたないといったところであろう。
 エピソードやヒストリーからは完全にそれてしまったが、単純に面白がってくれれば幸いである。




 
最新情報 メール