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2004年9月4日(土)
46.いかんせん勘違い

 すっごく単純なことを、違うふうに解釈していることって多々ある。誰もが知っているようなことを知らなくて、恥をかくことも。
 でも、それって誰にでもあることなんだよね。そういうのを聞きつけた途端、まるで鬼の首を取ったように、
「学校で習ったでしょ!」
「こんなことも知らないなんて、頭悪いんじゃないの!」
 なんて言う人もいるけど、人はそれぞれ得手不得手な分野があるし、思い込みで勘違いしていることなど多々ある。学校で習うようなことでも、そのときたまたま風邪をひいて休んでいたとかさ。

 以前『プライベート・ライアン』という映画があったが、私はあの映画をビデオで観るまでは、ずっと「プライベートなライアン」イコール「私だけのライアン」「秘密にしたい恋人ライアン」の意味だと思い込んでいた。戦場を舞台にした、トム・ハンクスの恋物語だろうと。
 ところが、主人公の相手役らしきおネエちゃんが出てこない。延々見続けて、そして気付いた。「プライベート」は兵士、もしくは上等兵のことだと。
 だったら『ライアン上等兵』ってタイトルでいいじゃんかよー!
 ちなみに、同じ勘違いをしていた友人が何人かいた。エバりまくって、教えてやったけどね。

 私の友人の中でも、「台風一過の青空が…」というのをテレビで聞いて「台風一家」と勘違いしてたり、「サグラダファミリア」は日本のゼネコン「桜田組」が作った建物だと思い込んでいたり。
 居酒屋でエイヒレを注文したところ、それを見たあるネエちゃんが、
「これ何ですかぁ?」
「エイヒレだよ」
「お魚ですかぁ?」
「そうだよ」
「…エイヒレって、どうやって泳ぐんですか?」
 ちなみに、アンキモという名前の魚もいない。
 別の友人は以前飲み屋で「〆サバ」を「メサバ」とうっかり読んでしまって、大笑いされていたが。
 でも、いちばんヒットだったのは「自律神経失調症」を「自律神経出張症」だと勘違いしてたヤツの話だ。自律神経がどこか遠くに行ってしまう病気だと、ずーっと思っていたらしい。

 いやいや、私も人のことは笑えない。
 つい最近まで「受託収賄罪」を「じたく収賄罪」だと思っていた。自宅で賄賂を受け取るなんてそりゃ悪いヤツだと、テレビを観ながらぷんぷん怒っていたもんだ。
 あと、「身欠きニシン」を「磨きニシン」と思い込んでいた。ニシンをたわしか何かでゴシゴシこすって磨いたものだろうと。事実を知ったときは、さすがにちょっとショックだった。
 そんな勘違いは、ほんとに山ほどある。漢字の読み間違いなども含めると、自分はもしかしたらバカか、と悲しくなってしまう。

 あるとき、私のマネージャーだった女の子からうちに電話が入り、
「○○さんから電話があって、△△さんと一緒に暑気払いをやるので、眠子さんも来ないかって言ってました」
「あ、行く行く!」
「そうですか。ではそのように伝えます。…たぶん一人1時間くらいで終わると思いますので」
 えっ?と思い、思わず聞き返してしまった。
「暑気払いでしょ?」
「はい。そう言ってました。…あの、暑いのをお寺でシャッシャッてお祓いするんですよね?」
 面白いぞ。
 電話をかけてきた○○さんは
「3人だから、3時間くらいで終わるわよ」
 と言ったらしい。お祓いをすると完全に思い込んでいる彼女は、だから「一人1時間」という計算をしたみたいなのだ。
 しかも「お寺で…」と言っている。シャッシャッとお祓いをするのは神社であって、ダブルで間違えている。
 でも後日、この話を周りの人にしたところ、どうもウケが悪かった。「暑気払い」という言葉を知っている人が少なかったからだ。
「じゃあ、暑いのをぶっ飛ばせー!、という名目で飲み会をするときは何て言うの?」
「飲んで暑さを忘れる会、とか言うんじゃないっすか」
 ほんとか?

 難しい言葉はどんどん死んでゆく。でも、それでもいいんじゃないかと、私は思う。簡単な単語ですべてが伝わりあうのなら、それにこしたことはない。
 言葉を熟知し、世の中を知ったようなつもりでいても、時々思いっきり深い落とし穴にはまってしまうこともある。また、言葉をたくさん知っているからと言って、頭がいい証拠ではないとも思う。
 年をとるほど恥をかくことに恐怖感を抱いてしまうのは仕方がない。だから、なるべく恥をかかないように、なるべく平易な言葉を選んで話すようになった。
 それでも、40歳過ぎて「巣窟」は「すくつ」ではなく、「そうくつ」と読むんだということに気付かされた。
 落とし穴はまだたくさんあるはずだ。




 
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