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2004年9月1日(水)
45.ちょうだいちょうだい

 またしてもトルコの話題である。

 以前このDairyにも書いた、生理用品を盗んでいった掃除のおばちゃん。改めて確認したところ、Tシャツと靴下もごっそり盗っていってくれていた。それもいいものだけを選んで盗っていく始末。
 また、洗面所に置いていた私の洗顔石鹸や歯ブラシ(すべて未使用)もなくなっていた。
 さらには、化粧用コットンやクレンジングオイルはなぜか中途半端になくなり、もしかしたら合鍵を作ってたまに忍びこんでいるんじゃないかと思ってしまった。

 私は案外几帳面な性格の上、記憶力も結構いいので、自分がどこに何を置いたかというのはほとんど覚えている。おばちゃんは、いっぱいあるんだからバレないだろうと思って盗っていったのかもしれないが、甘いのである。しかも彼女はうちの近所に住んでいる。
 その盗んだTシャツを着てるところをもし見掛けたら、それが証拠とばかり警察に突きだしてやると意気込んでいたら、そんなことしたって無駄だよと、うちのトルコ人に諫められた。
 たとえ盗品であろうと手に入れた物は彼女の物だから、というのが理由だ。

 そんなのありぃ? だったら警察なんていらないじゃん。と思ったのだが、その警察自体が賄賂次第でどうにでもなる人たちなのだから、確かに言うだけ無駄である。
 こうなると、金を出して所有した者の権利なんてないに等しいのである。
 また、私はしょっちゅうトルコに荷物を送っているのだが、何度も届かなかったり中身を抜かれたりしている。つまり、郵便局員も泥棒行為をしているということだ。

 物がない、というのならわかる。でも、トルコ(特にイスタンブール)は日本と変わらないくらい物があふれている。
 なのに、盗まれる。そして、物を欲しがる。
 ちょっとでも仲良くなると、
「日本から送ってちょうだい」
「今度トルコに来るときに持ってきてちょうだい」
 いきなり『ちょうだいちょうだい攻撃』が始まってしまうのだ。

 最も言われるのは、携帯電話。日本では安くていい物があるからと言うのだが、トルコでは使えないと説明してもなかなか信じてもらえない。日本はテクノロジーやシステムが発展している国だから、絶対にこっちでも使えると言い張ってくれるのだ。
 デジタルカメラや洋服、化粧品なども要求の対象である。
「あなたが持って(着て)いるのと同じ物でいいわ」
 同じ物でいいって言われても、これは決して安い物ではないし、簡単に買ってあげることはできないよと言うと、あとでお金を払うと言う。
 公務員の給料が500ドル前後の国で、それ以上するワンピースの代金を払えるもんかと思うのだが、彼らは払う気でいる。ただ、それはいつだって気持ちだけなのだ。日本人の常識からすると、払えるあてがあって初めて人に物を頼むのだが、彼らはそうではないみたいだ。

 また、人に物をねだるということは決して悪いこと、恥ずかしいことではないと思っているところがある。
「うちの娘の顔がカサカサなので、あなたが使っているクリームをちょうだい」
 平気で言われたりもする。私が今使っているクリームをあげちゃうと、私のがなくなっちゃうじゃんと思うのだが…。
 それは子どもでも同じことで、
「今度トルコに来るときにね、シャンプーと髪飾りとネックレスと、それにあなたがしているのと同じ指輪を買ってきてね」
 無邪気にこう言ってのける。さらに、隣でそれを聞いていた子が彼女にコソコソと耳打ちをしたかと思うと、
「今度来るときにね、シャンプーと髪飾りとネックレスと、あなたがしているのと同じ指輪と、彼女にはブラウスを2着買ってきてね」
 増えていく。

 一日に何人も、何度もそんなことを言われ続けると、思わずひっぱたいてやろうかという気持ちになってしまう。
 それだけ日本の製品は優秀ということなのか。日本製の物に憧れがあるのか。
「中国製の物はいっぱいあるけど、やっぱり日本の物はいいから」
 でも、日本製の物ってほとんど中国の工場で生産しているんだけどなぁ。

 そんな『ちょうだいちょうだい攻撃』のトルコ人であるが、改めて考えてみると、今まで私はトルコ人に物をねだったことはない。もし反対に私がちょうだいちょうだいと言ったらどんな反応をするんだろうと思い、うちのトルコ人に訊いてみた。
「くれるよ」
 私が欲しがった物をもし彼らが持っているならば、どんなに大切な物であろうと、あっさりとそれをくれると言うのだ。

 そう言えば、決してねだったわけではなかったが、きれいだと褒めた手編みのレースを貰ったことがあった。自分のバックの中身を全部ひっくりかえし、「これしかないけど…」
 出会えた記念に、とサングラスをくれようとしたこともあった。
 物が大事なのか。それとも、物をあげることが大事なのか。
「わかったと返事して、何も買ってこなくていいから」
 うちのはそう言うのだが、「ちょうだい」と言われること自体に慣れていない日本人にとっては、なかなか対応が難しいのである。

 話は変わるが。
 トルコは手作りのアクセサリーがとても安くてきれいなので、友人へのお土産に買ってきたことがある。
「すてきぃ! 今度またトルコに行ったときにたくさん買ってきてね。あ、お金はちゃんと払うから」
 そうお願いされたので、彼女のためにバカ正直にたくさん買ってきたところ、
「あれはあのときのノリで言ったことだから…」
 再度確認しなかったあんたが悪い、という感じで言われてしまった。もちろん彼女はアクセサリーを見ようともしなかった。
 ま、こういう日本人もいるってことだ。




 
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