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2004年4月22日(木)
5.頑張れ!我らフリーランス

 このあいだ知人に、音楽業界の人間ってテリトリー意識が強くってイヤ、と言ったら、
「そのテリトリー意識を利用して本を書いた(及川眠子著『夢の印税生活者』、好評発売中)くせに、フリーランスみたいな戯れ言を言うんじゃない」
 そうお叱りを受けてしまった。
 ま、言われればもっともなことで、音楽業界なんていう狭ぁ い世界に生きる、ちっちゃ な心の人たちの特異さを強調して、それをネタにきっちり本を一冊書き、稼がしていただいたのは事実だ。
 しかし、フリーランスみたいな戯れ言と言われてもさ。私ってフリーランスじゃん。じゃなきゃ何だと思ってくれているのだろうと、また新たな疑問が湧いてきてしまった。
 私は一応自分の会社は持っているが、社員は解雇してしまったので、今はスケジュールから事務から全部自分一人でやっている。もちろん金の交渉だってやる。
 そんな私と同じ境遇にあるカメラマンと、以前話したときのこと。
「じゃあギャラの話をって始めると、いきなり相手が、そんな中小企業のオヤジみたいなことを言わないでくださいよ、って言いだすんだよなー」
 彼の撮る写真は、良く言うと芸術性が高く、私からすると「マニア向け」な要素が強いものなんだけど、だから、よけいに金の話をするとみんな意外に思ってしまうみたいで、いきなりざざーっと引かれてしまうらしい。
 でも、彼も私も中小企業のオヤジとおばはん。プラス個人としては、フリーランスのカメラマンと作詞家だ。
 書いている詞や撮っている写真と本人の商魂は別のものだと、私なんて思うんだけどさ。人は作風や知名度で相手の人格をも決めたがるみたいだ。
 それとも、自分の好きなことを仕事にしているような贅沢なヤツらは、金の話なんてするんじゃねえと思っているのだろうか。
 あるいは、フリーランスとか中小企業の経営者ってのは、人の差別の対象になるような存在なのだろうか。
 またまた、イラク人質事件の話になるが、
「危ないところに行ってはいけないと言われても、行ってそれを見て伝えるのが我々ジャーナリストの仕事だ」
 てなことを(かなり大まかだが)広河隆一さんが言っていた。
 また、大手新聞社や雑誌社が自分とこの社員を行かせられないから、フリーランスのジャーナリストたちにチャンスがあるのだってこともわかる。そういう意味では、確かにフリーランスは安く使われているわな。
 自己責任とか、経費の一部負担とか、迷惑かけやがってとか、まぁさんざん言われているけど、私の正直な意見として、ジャーナリストに限ってはどんどん危ないところに行って、ばんばん危ない目に遭ってほしい。
 だって、私はそこに行けないもの。だけど、知りたいもの。だから、私の代わりに行って、彼らが見たことを伝えてほしいと思うのだ。
 ジャーナリストってのは、何だかんだ言っても結局「スクープ」を取れるかどうかでしょ? 安全な場所より危険な場所の方が、よりスクープを取れる確率が高いわけだし、ましてや「一発当てるぜ」と思っている若いジャーナリストだったら、そこに行きたいと思うのは当然だと思う。
 また、すでに一発当てた人でも、次の一発を狙いたいよね。
 それはかつてカンボジアの地に散った沢田教一だって一ノ瀬泰造だって同じだっただろう。死んだ人間を美化しながら、片方で生きて帰ってきた人間に対して非難するなんて変じゃない?
 何の組織にも加わらず、何の後ろ盾も持たず……な んて言うとカッコいいけど、要するに給料制じゃない者たちってことだ、フリーランスは。そして、延々とスクープを取り続け、また延々とヒットを出し続けなければ、食えなくなってしまう者たちのことだ。
 だったら、人が行かないところに行こう、人がやらないことをやろう、何だってネタにしてしまおうと思うのは当然。もちろん、ネタの使い回しも水増しも自分たちの命をつなぐため。
 私は音楽業界のテリトリー意識をネタに本を書いて、悪口もいっぱい書いて、だけど、な んも後悔していない。
 また、フリーランスじゃない人たちのことも、蔑んではいないし羨んでもいない。組織に属する人たちがエライなんてことも思っちゃいない。
 ただ、私自身はフリーランスだし、中小企業の経営者だし、これからも戯れ言をいっぱい言うぜってことだけだ。
「及川、こんなこと書きやがって。もう仕事やらない!」
 言ってくれるのも結構。それが私の「自己責任」でしょ?




 
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