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私は寝るのが大好きだ。何時間でも寝ていられるし、どこでも眠れる。電車の中でも喫茶店でもスタジオのソファーの上でも、気持ちよく熟睡させてもらえる。
テレビを観たり考え事をするときも、常に寝っ転がってやっている。で、そのうちウトウトし始めて、そのまま寝てしまう。
いかにいい睡眠をとるかということのために起きているみたいなものだ。
さて。私も四十数年生きてきて、結婚離婚も経験しているし、まぁそれ以外にもベッドで朝まで一緒に過ごしたという男も何人かいる。
彼らはもちろん私の寝姿を見て知っているわけだが、なぜか全員口を揃えたように同じことを言う。
「最悪!」
イビキに寝言、歯ぎしりもさることながら、寝相がめちゃくちゃ悪いんだと。さらには寝ボケるらしくて、それがまたものすごく相手に迷惑をかける寝ボケ方だと言うのだ。
ずいぶん前に、当時付き合っていた男と一緒に旅行に行き、ビジネスホテルに泊まったことがあるのだが、夜中に私が突然、
「ねぇねぇ」
と彼を揺り起こす。何事かと目を覚ましてみると、
「部屋に誰かいるよ」
それで彼は一気に目が覚めて、部屋の中だけじゃなく風呂場やクローゼットの中まで調べてみたところ、誰かが潜んでいる様子はない。まさか幽霊か?とベッドに戻ってきて、
「誰もいないけど?」
私に恐る恐る訊いたところ、返事をしない。よーく見ると、イビキをかいてグーグー眠っている。そして、翌朝そのことをまったく覚えていなかった。つまり完全に寝ボケていたというわけだ。
また、睡眠中に相手に説教をする、というのもあるらしい。
やはり寝ている相手を無理矢理揺り起こして、
「あのね。お酒を飲みたくないかもしれないけど、ぐっすり眠るためには少しくらいはアルコールも必要だよ」
「・・・・うん、そうだね」
相手は返事をしてくれるのだけど、私はやっぱり熟睡している。寝言と呼ぶには、あまりに理屈っぽすぎるお言葉である。
寝相の悪さもハンパではないらしい。殴る、蹴る、つねる、ベッドから突き落とす。さらに、落ちた相手を上から踏むということまでやるみたいだ。
一つの布団に寝ている。寒いから私がべたーっとひっつきにくる。で、しばらくすると今度は暑くなって、ひっついている相手がうっとうしくなり、あっちへ行けとばかりに殴る蹴るする。そして、また少しすると寒くなるからひっつきにくる。また暑くなって殴る蹴るする。・・・・というのを延々繰り返し、とうとうベッドのはしっこまで追い詰めた上で、それを一気に蹴り落とす。
眉間に強力な空手チョップを見舞ったこともあるらしい。寝ている相手は何が起こったのかと、びっくらこいて飛び起きたそうだ。
「あんたと一緒に寝るのはイヤ!」
男だけに限らず、友達にも何度そう言われたことか。
昔はよく合宿みたいに、私や友達の家で雑魚寝をした。みんなで飲んで、帰るのが面倒臭くなっちゃったから、このまま寝ようってな感じだ。
何枚か布団を並べて寝ていると、私が隣の布団からころころ転がってくるらしい。で、そのまま人のかぶっていた布団や毛布を奪っていく。次は、反対方向にころころ転がってゆき、同じことをする。
そして、その奪った布団を全部自分で抱え込み、しばらくすると暑くなってくるから、自分の足下に丸めて捨てる。
もっとひどいときは、相手の腕や脚を爪の先でくすぐったり掻いたりするらしい。
部屋が狭かったり、布団が少なくて、みんなで体を寄せ合うように寝なきゃいけないときは、もう最悪。私の手がばんばん頭や体に降ってくる。それを避けるように丸まって寝ていると、今度は背中や脚に蹴りが入る。
「てめえ、喧嘩売ってんのかー!」
思わずそう言いたくなる気持ちもわかる。すまんと言うしかない。
でも、私自身はまったく覚えていない。もちろんぐっすり眠っているからだけど、自分が人に迷惑をかけるような寝方をするんだということにも気付いていない。
世の中にはまるで死体のようにびくとも動かずに眠る人もいるみたいだ。それでちゃんと睡眠がとれてんのか、って私が心配することじゃないけどさ。
「あんたの人間性が全部眠ってるときに出てる」
どんなに可愛ぶっていても、一度一緒に寝てしまえば本性ばればれってやつだな。
「だけど、寝顔は・・・・」
と言いかけるから、まるで天使のようだよと続くのかと思ったら、
「幼虫に似ている」
と言われた。
私って、いいとこないじゃん。
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