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2004年7月4日(日)
36.忙しいのがお好き

「忙しい」と、人に言うのが好きな人たちがいる。かっこいいと思っているんだろう。特に音楽業界には、
「ほんと忙しくってさぁ。まいっちゃうよ。ええっと今週は・・・・」
こっちが聞きもしないのに、自分のスケジュールを事細かく教えてくれる人までいる。

今やスローライフの時代である。年収300万円でもゆとりを持つことがいいとされているのに、音楽業界は相変わらず体質が古い。
「ちょっと休暇をとると、もう仕事も私用も山ほど溜まっちゃって、いやになっちゃうわ〜」
実に嬉しそうである。
たかが1週間や10日休んだくらいで、そのあと「あわわわ・・・・」になってしまうのは、よっぽど仕事が出来ないか、やることが遅いんだろう。

だいたいほんとに忙しい人は、人に対してこれ見よがしに「忙しい」なんて言ったりしない。
私の周りでも仕事が出来る優秀な人ほど、いきなりのドタキャンもないし、時間もきちんと守ることが多い。
日にちも場所もフィックスされていて、人数を確認しなければいけないというような集まりにさえ、
「行けたら行くけど、どうかなぁ」
みたいな曖昧なことは言わない。でも、そういう人に限って、
「あらそう。じゃあ人数に入れないでおくね」
と言うと、なぜかムッとされるんだなぁ。

忘れた頃に電話をかけてくる同業者がいるのだが、なぜか冒頭の挨拶代わりに必ず、
「今さぁ、○○と××の仕事をやっていてさぁ。そのあと△△のプロデュースをしないかなんて話も来ていて、もう忙しくて大変だよぉ」
そんなに忙しいのに、わざわざうちに電話をかけてきて時間を潰しているあんたってなんだ? 
まぁきっと「頑張ってるんだね」って褒めてほしいんだろう。私は意地悪だから、褒めないけどさ。

って言うか、いつも思うんだけど、私たちの仕事って結果がすべてなんじゃないか。
これはもちろん私たちの業界だけに限ったことではないが、1週間かかって一所懸命に仕上げたものよりも、要領のいい人間が3時間で仕上げたものの方がクオリティーが高ければ、どちらが評価されるのかは一目瞭然。どれだけ汗を流したかなんて重要ではない。
かつて私のマネージャーたちがよく口にした言葉に、
「一生懸命やってますから。頑張ってますから」
というのがあるのだが、私はこう言われるたびに、その過程にこだわらないから結果を出してやる気を示せ、と諭していた。
でも、逆の立場で考えれば、彼らは結果を出せないから、その過程や想いやらを慮ってほしかったのかもしれないなぁ。

そういう私は実に仕事が早い。なんせ要領がいいから。そして、時間にも〆切にも正確である。
こんなことも出来ないおバカな子、という見られ方をするのが非常にイヤであり、一種の恐怖心さえ抱いていたので、いつのまにかサクサクと仕事をこなす要領を身につけ、きちんとした性格になっていったのであろう。

「自分が出来るから、他人も出来ると思うのは間違いです!」
泣きながらそう言った子もいたけど、出来ないことを私は全然否定しない。ただ、どんな場合であろうと、報われない努力はないと思っている。
出来ないと言うことで、努力することを放棄してないか?
また、忙しいと人に吹聴することで、自分を必要以上に優秀に見せようとしてないか?
「忙しい」という言葉に隠されたものが、たとえば「だから、私に電話しないで」とか「あなたの相手をしている暇はないの」という意味なら、それはそれで使いようのある言葉だろうが。しかし、自分から連絡してきて「忙しいから、またあとで」はないよな。

ある女性が自分の彼氏はとても優秀だと言い張った。
「だって、彼は家に帰ってからもいつも仕事してるのよ」
ねえちゃん。それは就業時間内で仕事を片付けられない、無能なヤツってことなんだよ。
愛はあばたをえくぼに変える。
忙しい、忙しいと常に言っている恋人や伴侶を、すてき と思っている人も多いんだろうな。




 
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