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2004年7月2日(金)
35.三つ子のサリー百まで

「最近CMにもよく出てるけど、サリーもずいぶん老けたわねぇ」
 あるとき、友達がふと呟いた。
サリー? 何じゃそれは?
誰のことを指しているのかわからず訊けば、岸辺一徳のことだった。サリーとは、彼のザ・タイガース時代のニックネーム。

若い人にはきっとザ・タイガースも岸辺一徳もピンとこないかもしれない。パソコンのCMで木村拓哉といっしょに出ている人、という説明する方がわかりやすい。ましてや、彼の名前が昔は岸辺おさみだったということを覚えている人も少ないだろう。
と言うか、サリーと呼ばれるのがイヤになって、わざわざ改名したというのもあるんじゃないだろうか。まぁ真意はわからないが。

私の昔からの友人にマコトという名前のヤツがいる。マコトだから、みんなからは「マコりん」と呼ばれていた。
最近約20年ぶりで再会したのだが、髪も薄くなり腹も出て、すっかりオッサンになっていた。
でも、みんなは昔のニックネームのまま「マコりん」と彼を呼ぶ。40歳過ぎのオッサンに向かって「マコりん」はないだろうと思いつつ、今さら苗字で呼ぶのも変だしなぁという感じで、一応昔のように呼んでみるけれど、妙な居心地の悪さを感じてしまった及川である。

若い頃はみんな若いというだけで可愛かったり輝いていたりするから、ついファンシーなニックネームで呼びがちである。でも、人はいつまでもキャピキャピしていられっこない。
やはりオッサン・オバハンになったときのことまで考慮に入れて、ニックネームをつけなきゃいかんなぁ。

だけど、私自身はあまり人のことをニックネームで呼ぶのが好きではない。ニックネームで呼び合う関係性にありがちな、距離感を持たない馴れ馴れしさが苦手なのだ。
だから、男でも女でもたいていは苗字に「さん」か「くん」を付けて呼ぶのだが、人によってはそれがすごくよそよそしい感じに思うこともあるみたいだ。時々注意されてしまう。
「もう友達なんだから、ミッチョンて呼んでよ」
イヤだよ。確かにおまえの名前は「ミツコ」だけどよ。「ミッチョン」ってキャラクターじゃないだろ。
それよりも、いい年をして自ら平気で「ミッチョン」と言える厚顔さに呆れてしまう。
また、相手との距離感や付き合いの内容を考えて、呼び方を決めているのだから、
「今日からマユミって呼び捨てにしてくださ〜い」
そんなふうに押しつけてしまうのもどうかって思うぜ。

逆に、仕事の付き合い以上に思っていない相手から、親しみを込めて「ねこぴょん」などと呼ばれると、思わずそいつの首を絞めたくなってしまう。
「及川センセイと呼ばんかい!」
普段は「先生」と呼ばれることにものすごく抵抗があるくせに、ここぞとばかり上下関係のキビしさを振りまわしてしまいそうになる。
呼び方というのもなかなか難しい。

しかし、ニックネームならまだなんとかなるが、本名がファンシーな場合はジジババになったら、さぞかし周りは困るだろう。
最近は親がとち狂って、大して可愛くもないガキにフリフリの名前を付けたがる。
「レオナ」くんとか「ジュノン」ちゃんとか、思わず何人やと問い掛けたくなる名前や、月と書いて「ルナ」ちゃん、海と書いて「マリーン」ちゃん、飛翔馬と書いて「ペガサス」くんとか。世間にギャグをかましているのか、と疑いたくなるような名前もある。

 小学校の名簿はまるでキャバクラの源氏名の羅列のようで、エロ教師が増えてしまうのも仕方がないのかもしれない。
そのうち「来夢来人(ライムライト)」くんとか、「多恋人(タレント)」ちゃんとか、田舎の国道沿いにあるパブスナックのような名前をガキに付ける親まで出てくるかもしれない。
「子供が産まれたのよ」
「あら、おめでとう。で、名前は?」
「ビデアキって言うの。秀才の秀に、明るいって字」
なんて聞くと、妙にほっとしてしまうもんなー。

そう言えば、広末涼子の子どもの名前は「ヒロシ」らしい。漢字はわからないけど。それを聞いて、いきなり私の中で広末涼子の好感度が上がっちゃったもの。えらいぞ、広末(なんのこっちゃ)。
名前なんてのは一生使うものだから、平易で覚えやすいものの方がいい。って「眠子」なんていうおかしな名前を持ったヤツに言われたかねぇか。

しかし、年をとったとは言え、ジュリー(沢田研二)やショーケン(萩原健一)、マチャアキ(境正章)にはさして抵抗がないのはなぜだろう。サリー(岸辺一徳)にはものすごい違和感を感じてしまうのに。
謎だ。




 
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