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枕が変わると眠れない、という話をよく聞く。私の場合は枕が変わっても眠れるんだけど、便器が変わると出なくなる。いつも旅行中はずーっと便秘で苦しんでいる。
しかし、なぜだかタイだけはすっこんすっこん出るのだよ。辛いものを食べるせいかなぁ。
今まで三回(そのうち一回はプーケットのホテルで死んでいたから、実質は二回)タイに行って、いずれもすこぶる快便。暑いし湿度は高いしダレダレになるんだけど、妙に体調がいい。
やっぱり老後はタイか。
それ以外の国は全然ダメ。気候は似ているのに、カンボジアでもベトナムでも便秘。アメリカでもトルコでも、中国でも同じく。
しかし、一週間ウンコが出ないというようなことはない。せいぜい四日くらい。で、ある日溜まりに溜まったモノが膨大な量となって出てくる。
一度台湾のホテルで、ウンコをしたあと流れなくて、水とモノが逆流してきたことがあった。どうしようかと悩んだ挙げ句(さすがにフロントに電話して来てもらうことはできなかった)、アメニティーの歯ブラシで細かく砕いて、やっとこさ流した。
日本のトイレだと、結構な量をしても詰まるということはほとんどない。やはり日本製はよくできてるわ。中国のトイレなんて、紙も流れていかないからな。
私はトルコのイスタンブールに家を持っているのだけど、トルコはイスラム圏だから、紙で拭かずに水で洗う。近代的なホテルなどはそれでもちゃんと紙が備え付けられてあるけど、田舎に行ったらまずトイレに紙は置いていない。
もともとのトルコ式トイレは、日本の和式トイレと同じような形をしていて(座る向きが逆で、金隠しがない)、備え付けの桶に水を汲んで、それで手を使いながら洗う。
ところが、最近はほとんど洋式トイレに変化していて、これがとても難しい。
ウオシュレットのように水が出る管がちょうどお尻の下あたりにあるのだが、ウオシュレットは水が上(尻)に向かって放出される。でも、トルコ式のは水が正面の方向に出てくるのだ。
ちょろちょろと流れる水を手にすくって、それでお尻を洗うわけなのだが、私が未だにわからないのは、尻を洗うための手は後ろから差し込むのか、それとも前からなのか。
いずれにしても、便器も自分もびしょびしょになる。
さらには、その管の代わりにホースがついているトイレもあって、もうこうなるとどうにもできずに、仕方なく日本から持ってきたポケットティッシュを使って拭くしかない。紙が流れていかなければ、そのままシカトして逃げるようにトイレから出て行くだけだ。
イスラム教徒でもある、ジャーナリストの常岡浩介さんにどうすればいいのかを訊いたところ、洋式の場合は便座を上げて、便器の上に和式トイレのようにしゃがみこめばやりやすいと言う。
でも、それってものすごく足もとが不安定じゃないかと訊き返したら、みんなそうしているから大丈夫とのこと。・・・・・ほんとかよ。
で、そういうトイレのストレスから解放されようと、トルコの我が家にもウオシュレットを導入しようということになった。
しかし、トルコではウオシュレットは二千ドル以上するらしい。また、高いからと言って、性能が優れているとは限らないと言う。なので日本で買って送ることにした。
ところが、日本とトルコでは便器の規格が違っていて、ウオシュレットが設置できない。トルコの便器の方が全然小さくて、日本製のウオシュレットを上に乗せると隙間ができ、その隙間から水が溢れ出てくるのだ。
結果うちのトルコ人は、ウオシュレットを持ってイスタンブール中の便器屋を回ることになってしまった。
トルコ人というのは基本的に物見高くて、いいように言えば親切、悪く言えばお節介である。ないならないで済ませてくれればいいのに、便器屋のオヤジは日本にいる私のところまでコレクト・コールで電話をかけてきやがって、
「なぜこのマシーンに合う便器を送らなかったんだ?」
「そんなもの送ったら、郵送代が高くついてかなわない。だから、トルコで探せって言ったんだ」
「そうか。協力するぜ」
「あんたの店には、それに合う便器はあるのか?」
「ない。だけど、相談にのろう」
「じゃあ、そのウオシュレットに合わせて便器を作ってくれ」
「それは無理だ。でも、相談にはのれる」
「どう相談にのれるんだ? 他に当てがあるのか?」
「ない。でも、君と話をしているうちにアイデアが湧くかもしれない」
どうも暇を持て余しているらしく、いくらでも話は続く。
「すまん。うちのに電話を代わってくれ」
オヤジはまだまだ話したそうだった。しかし、電話を代わった途端、
「よその店に行け」
それだけ言うと電話を切ってやった。
結局、アンカラに住んでいる韓国人が大きめの便器も扱っているということで、それを取り寄せることに決着が付いたのだが。
私は改めて実感した。メイド・イン・ジャパンの製品はやはり素晴らしい。TOTOはエラい!
とりあえず便器のサイズは何とかなったのだが、外国製の便器というのは、日本製のより浅く作られていて、おまけに水位が高い。そこにウンコをすると、喩えて言うなら「子供用のビニール・プールに、むりゃくた浮かぶ大人の私」のようになる。要するに、ウンコが排水溝にすっこんでいかないで、そのままぷかぷか浮いている状態である。
そして、そのままウオシュレットを使うと、出したモノが全部自分にはね返ってきてしまう。
尻を洗いながら、尻がまた汚れてしまうのだ。便座の裏もはね返ったモノで茶色になっている。
なのでトルコの我が家では、いったんすべてを流してからでないと、ウオシュレットは使っちゃいけない条例をしいた。
ないよりはまし。そう言い聞かせながら、とりあえずは我慢している。
そう言えば、人に聞いた話なのだが、ウオシュレットをずっと使い続けていると、尻の穴の筋肉が衰えてしまうらしい。つまり何かあったときに踏ん張りが利かなくなるってことか。
私の老後はだだ漏れである。
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