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及川は、買いだめが好きである。と言うより、特に日用品はある程度買い置きしておかないと、不安になってしまうのだ。
ある日突然、トイレットペーパーがなくなったらどうしよう…。手で拭くの? それともウオシュレットで洗い、お尻が乾くのをただ待つの?
そんな不安をいつも抱えているから、トイレットペーパーだけでなく石けんや歯ブラシ、タオル、さらには文具類に乾電池、果ては切手やタバコに至るまで、とにかく買い置きを欠かさない。
たとえば、ティッシュペーパーなんかにしても、「これが最後の1箱」とか「あと1箱しかない」とかの状況で買いに行くのではなく、最低でも5箱は残っているようなときでも。ティッシュペーパーのストックを入れてあるクローゼットの棚、そこに「空きのスペース」が見えたときに、速攻で買いに行くのである。
「なんで、そんなに買いだめするの?」
クローゼットの棚いっぱいにある買い置きの日用品を見て、夫は不思議そうに首をひねる。
実は、うちの母親も買いだめ症候群なので、我が家の物入れという物入れは、すでに買い置き商品だけでてんこ盛りなのだ。
1階のクローゼットには、数々の日用品と猫のトイレの砂などが。風呂場の棚にも、洗剤や石けん、歯ブラシの類い。玄関の棚には、スリッパの買い置き。ロフトスペースにも、シーツやタオルなどがごっそり。そして、キッチンの棚には、水やウーロン茶のペットボトルにインスタント食品類。
さらにさらに、私の仕事場に行くと、引き出しや棚のいくつもに文房具の買い置き。コピー用紙にCDR、プリンタ用インクにボールペン、クリップ、セロテープと、まるで店が開けるくらいの量がストックされてある。
我が家にある半分くらいは、「いま使わないもの」だ。だけど、「もしかしたら明日、もしくは3年後に使うもの」なので、捨てるわけにはいかない。
そうやって、物はどんどん増えていく。
もちろん、物は消耗品だけに留まらない。
いま手元に積み上げてある本の数々。毎日1册ずつ読んだとしても、ゆうに半年はかかるだろう。なのに、気になる新刊を見つけた途端、即アマゾンで購入。あとで読むならあとで買えばいいのに、とにかくいますぐに買わないと気がすまない。
洋服だってそうだ。近頃は季節先取りで、8月の暑さ真っ盛りの頃に、すでに秋物の洋服が店頭に並ぶ。汗をだらだらかきながら、毛糸のセーターや革のジャケットを試着する、私はバカ。いま買っても、それを着るのは2ヶ月後。わかっているのにやめられない。
それと、最近私は香水にハマっているのだが、お店やインターネットでチェックして、気になるものは購入。届いた香水を2、3度使ってみて、あっこれ好きだ〜っ!と思った瞬間に、追加で購入。まだ新品同様のボトルが手元にあるというのに、買ってしまうのである。
本や洋服、香水に関しては、とにかく「なくなってしまうのが怖いから」というのが、購入の理由。
最近は、良心的な出版社(いいものを作って、じっくりと売ろうという考えのところ)が出している本やベストセラーになったもの以外は、初版が売れなきゃさっさと絶版にしてしまうという話を聞いた。なので、とにかく店頭にあるうちに買っておかなきゃと思うのだ。
洋服も、迷っているうちに売り切れてしまうことが多々ある。どうしようかな〜、買おうかな〜、やっぱり考えてまた来るわ、と言って帰り、また来たときには売り切れていることがある。これが結構腹立つ。
しかし、もっと腹が立つのは、早々と購入しまだ袖も通していないのに、すでにバーゲンで安くなってしまうこと。なんだよ、待ってりゃよかったんじゃんよ。そう思いつつ、これも運・不運の成せること。あきらめるしかない。
香水の場合は、もう「限定品」とか「レアもの」などと書かれてしまうと、いてもたってもいられなくなる。
「グズグズと迷っているうちに、誰かに買われちゃうよ!」
「そうよっ、たかが4000円じゃないの! 失敗しても大したことないわよ!」
自分に言い聞かせるようにして購入。しかし、4000円を10回失敗すりゃ4万円になるんだよねぇ…。
こんな私みたいなアホが世の中にはいっぱいいるから、店は潰れずにやっていけるのだろう。
…とまぁ、とにかくうちには物が多い。
「いま使っているものがなくなるまで、絶対に次のものを買わない」
私と対照的な友人がいる。なぜ買い置きしないのか、その理由を尋ねたら、
「明日死ぬかもしれないから」
そういう答えが返ってきた。物を増やすのがイヤだとか、置いておいても使わないかもしれないしとか、そんなことではないらしい。
人の運命なんてわからない。いつものように家を出て、交通事故に巻き込まれたり、心臓発作を起こして、帰らぬ人になってしまう事例は多々ある。そのあと身内が自分の遺品を整理したときに、まだ使っていないものがゴロゴロ出てきたんでは、彼らがすごく悲しい思いをしてしまうのではないか、というのが彼女の意見だった。
「きっと使おうと思って、買ってあったんだよね…」
そう言いながら、遺族の涙する姿が目に浮かぶ。はぁ〜、深いなぁ…。
でも、私は末期ガンにかかったとわかっても、きっと買い置きをしてしまうだろうと思う。それが私の性分。んでもって、使っていない買い置きの品は、遺品としてみんなに配ってくれりゃいいさ。
「眠子さんの形見だって、入浴剤もらっちゃった〜」
どや! 最後まで笑わせまっせ。
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