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プロフェッショナルって、なんじゃらほい。
あまりにも「仕事をする意識」が足りない、しかも一応はプロとして活動している人たちを目の当たりにするたび、それを考えざるを得ない及川である。
翌日からレコーディングがあるのがわかっているのに、夜中まで酒をかっくらっているバカ。しかも風邪までひいて、当日思いっきり鼻声でスタジオにやってくる大バカ。ヴォーカリストは声が命なんだということを、わかっていないのかねぇ…。
まぁでも、その程度ならまだ可愛いもの。「失態」ということで、多めに見てもらえることだってあるさ。
打ち合わせに遅刻する。約束の期日までに楽曲を提出できない。わがままばっかり言って、みんなを困らせる。それはセンセイだから、もしくはアーティスト様だから仕方ない、と勘弁してもらえることも多い。
実際に私だって、寝坊して大遅刻をかましたことも何度かある。てめえふざけんな、とテーブルを叩いたこともある。機嫌の悪いときにはわがままだって言うさ。決して「よくデキた作詞家」ではないことは、自分がいちばんよくわかっている。根性悪いし、意地悪だし。
しかし、根本から「こいつはほんとに、この業界でやっていく気があるんだろうか」と思えるヤツに出会うとことがしばしば。
今日この時間にこのスタジオでこの楽曲を録るのがわかっているのに、曲をまったく(全然、である)覚えてこなかった歌手だっていた。スタッフは皆つくり笑顔で「忙しいから仕方ないよね」と言ってたけど、きっと心の中では「早く引退しろ」とか「もう二度とこいつの仕事はしたくない」とか思っていたに違いない。
時にはそんなビックリ仰天な人に出会う中でも、私が「同じ女として」最も情けなさを感じてしまうこと。20年間の作詞家生活の中で、二度ほどぶち当たったことだが…。
デビューに向けて、着々と準備をしている。事務所もメーカーも。作詞家や作曲家に楽曲を発注し、レコーディングもすませた。さぁこれからCD発売、頑張って売るぞという気合いがスタッフ間にも漲っているそのとき。
「妊娠しました!」
ひゃあぁぁ〜。おまけに、
「わたし、産みます!」
ほよよよぉぉ〜。
もちろん、そのデビューの企画はすべてお流れ。全員くたびれ儲けの銭失い。1円にもならなかったとは言え、作家はまだ「おいおい…」程度で笑っていられるが、事務所はほんとにつらかろう。
その子を発掘し、時間と金をかけて育てた、それがすべて泡と消える。地方出身の子なら上京させるのにも金がかかるし、ヴォーカルレッスンに通わせたりセンザイ(宣伝材料)用の写真を撮ったりするのも、なかなかバカにならない金額だ。
デビュー前とその後1、2年は持ち出しになるのは仕方がないが、ちょいと小ヒットでも出てくれれば、使った金など瞬く間に回収できる。その子に賭けて、その子を選んだ人すべてを裏切ったのと同じ行為である。
だけど、本人はそんなことは少しも考えちゃいない。怒りまくる事務所社長や担当ディレクターは、彼女にとってはいまや鬼か悪代官。せっかく授かった命をナントカ、という稚拙で自分勝手な理屈だけを振り回し、芸能人になってみんなにチヤホヤされるより、ささやかでもいい自分の幸せを選びたいとかほざきやがる
男がいるのは構わない。今どきの若いおねえちゃんに、「清く正しく美しく」なんて要求する自体が無駄だしな。それより、ちゃんと避妊しろよー。
避妊の方法さえ知らないほどのバカなのか。それとも相手の男が、デビューを目前にしたカノジョを、自分のもとに縛り付けておこうとする(よくあることだ)エゴな感情で、避妊を拒否させたのか。
結局、出産を決めたそのときに、彼女の芸能活動への道は断たれた。それを選んだのは、あくまで本人だ。
でももし、もしもだよ。その二人がこのままうまくいけば、彼女はきっと自分が選んだ人生に何の問題も抱かないかもしれないが、いつか離婚というようなことになった場合。かつてデビュー寸前まで行った、そしてそれを振り払った自分の過去をどのようにとらえるのだろう。
私にも作詞家になる以前に、結婚・出産への道がなかったわけではない。それを選んでいたなら、おそらく今頃は地方で平凡な主婦をやっているだろうと想像する。
とっくに子供の手も離れ、カルチャーセンターにでも通いつつ、昔のことをふと思い出す日々の中で。あのとき夢をあきらめた、若かりし頃の自分をどのように思うのだろう。望んだとおりにいかなかったけど、これもまた人生だと微笑んでいられるのか。
私にはわからない。
いま振り返ってみるに、私がラッキーだったと言えるのは、新人の頃に歌手も作曲家やアレンジャーも、いわゆる「大物」と一緒に仕事をさせてもらったことにある。
その仕事が売れる売れないに関わらず、私は彼らから「プロである」ことを学んだ。そして、プロ意識というものは、デビューする前から持っていなきゃいけないんだということも。
自分と同じくらいのレベルの歌手や作家たちとちまちま仕事を続けていたら、きっとプロであることが何たるかも気付かないまま、いまに至っただろうと思う。
プライドや自意識ばかりがプロ並みで、やっていることはアマチュア以下なんてのもたくさんいるが、大丈夫、そんなヤツはどんなに頑張っても決して売れることはない。
個人の生き方に定義はないけれど、プロを目指したときから、要求されるものはある。
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