及川眠子 Diary日記風エッセイ「ムカつく私がバカなのか、それとも世間が悪いのか」
 
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2007年3月8日(木)
■ 15.日々ドラマ

 テレビはよく観るが、ドラマはあまり観ない。観るのはニュースとバラエティ番組ばかりである。
 ドラマはとにかく毎週観なきゃいけないので、面倒くさい。「ビデオに録画してまとめて観ればいいじゃん」と言われるかもしれないが、そこまでして観たいドラマもないしなぁ…。
 正直言って、最近のドラマは面白くない。やっぱり1クール、11ないし12話で完結させてしまおうとすること自体に、無理があるからなのか。今振り返ってみると、私が子どもの頃観ていたドラマは面白かったなと思えるのは、やはり1年間という長さでじっくり作っていたからかもしれない。

 だけど、ドラマは観ないと言いつつも、つい観てしまうこともある。最近では『華麗なる一族』。
どうして「○○放送局開局○周年記念番組」という冠が付くと、山崎豊子作品になってしまうのだろうね。まぁ、山崎作品はスケールの大きなテーマを扱っているものが多いので、自ずと見応えのあるドラマになるだろうという予測なのだろうが。
ここんとこ山崎豊子原作モノに加えて、松本清張モノも視聴率がいいみたいだ。やはり原作が優れているからだろう。と言うより、優れた脚本家が少なくなっているせいなのか。
コミックを原作としたような、ちまちまとしたドラマも増えている。でも、それが悪いというのではなく(漫画が原作でも、『Dr.コトー診療所』なんかはちゃんと面白いし)、何もアイデアがないから漫画に頼らざるを得ない、といった感じ。

 ところで、『華麗なる一族』の話に戻るが…。観ていてどうにも気になってしまう部分がある。
まず主役・万俵鉄平役の木村拓哉について。完全なミスキャストだと思っているのは、私だけだろうか。あの時代にあの髪型はおかしすぎるんじゃないか、なんてことは(他の芸能活動もあるだろうから)とりあえず置いておいても、すべてにおいてしっくりこない。
三代目とは言え、一応万俵家は財閥で、鉄平は言ってみれば良家の跡取り息子なワケだ。まず、彼からはそんな品位が感じられない。万俵製鉄を仕切り、大勢の社員たちに支持されるような魅力もイマイチ。加えて、出生の秘密に苦悩し、正義感溢れるがゆえに悲劇へとひた走ってゆく、そういう人間くささみたいな部分も何となく希薄だ。
結局彼は最後、すべてに絶望して自殺してしまうのだが、果たしてそこに至るまでにどれだけの演技力を見せてくれるのか。
あのドラマでハマリ役なのは鈴木京香(でも、10年前の原田美枝子が演じていたらもっと良かっただろう、とも思ってしまう)と仲村トオルくらいか。あとは「うーん…」と唸りたくなる配役ばかり。豪華キャストなのに、なぜか皆の印象が薄いのだ。

 しかぁーしっ! 
私が『華麗なる一族』において抗議したくなるのは、キャスティングや演出などではない。そんなものは、はっきり言って二の次。それより、もう画面に映るたびに、気になって気になってたまらないことがある。
万俵財閥の初代目の肖像画。つまり、キムタク演じる鉄平のお祖父さん。
「鉄平は祖父さんに生き写しだ」と言われ、ひょっとすると祖父と母の不義の子どもかしれないという前提もあって、わざわざキムタクに似せて描いた肖像画なのだが、これがほんとに笑っちゃうのだ。いや、笑ってるのは私だけなのか?
だって、あの肖像画はどう見ても夏木陽介。キムタクの似顔絵に、シワとヒゲを足し白髪にしてむりゃくた老けさせたら、若い頃の(それもギラギラ脂ぎっていた頃の)夏木陽介になってしまったって感じ。財閥始祖の威厳も何もありゃしない。
国宝級の家具や調度品を使用し、制作費に5億円もかけたということなのに、ストーリィー中で重要な役割を果たす肖像画だけが妙に安っぽいのだ。
あれを見るたびに気になるとともに、ほんとにこれでいいのかと、テレビに向かって突っ込みを入れてしまう及川なのである。

 そんな『華麗なる一族』は、観る気もないのについ観てしまうドラマなのだが、先日テレビ欄を眺めていて「おっ、これは観なきゃ」と思ったドラマがあった。
それは、私の敬愛する花登筺原作の『細腕繁盛記』のリメイク。
及川は、松竹新喜劇と花登ドラマで育ってきたと言っても過言ではないくらい、子どもの頃からの花登作品のファン。『細腕繁盛記』もそうだが、西郷輝彦主演の『どてらい男』なども大好きだった。

 何が好きかって…。それは山崎豊子の小説にも同じことが言えるのだけど、登場人物のほとんどが妬みや嫉みに凝り固まっていて、とにかくドロドロとしたヤらしい人間ばかりなのだ。
だって、いい人ばかりのドラマなんてつまらないでしょ。腹にイチモツ持った人間たちが、純粋で善良な主人公をいじめまくり、あーだこーだと画策するから、楽しいんじゃん。
でも、新作『細腕繁盛記』は、荻野目慶子演じるところの義理の妹の正子以外は、のほほんとしたいい人たちばかりなのさ。特に、勝村政信が演じた主人公の夫(ちなみに、主人公の加代役は沢口靖子)。もともとの作品では、小心者で猜疑心の塊みたいな男なのに、新作ではただの世間知らずのいい人にしかすぎない。
「おめぇら、もっと加代をいじめろよぉー!」
どうにも中途半端な気持ちだけが残って、ノリきれない及川。銭の花を咲かせるには、もっと血の滲むような思いが必要なんじゃないの。

 ちなみに及川、毎週欠かさずとはいかないが、『拝啓、父上様』だけは楽しく観ている。倉本聡はさすがと言うべき。主演の二宮和也も可愛いし。
でもやっぱり、これだけの作品なら1クールこっきりではなく、1年かせめて半年をかけて、じっくり人間ドラマを見せてほしいと思ってしまう。今どきそんな贅沢なドラマを作るのは難しいとは思うけどね。

  ドラマの中でも、人の思いや関係性はどんどん希薄になっていく。これも時代の流れなのか。
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