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私を本気で叱ってくれた、あなたは不思議な人だった…。
そんな詞をさんざん書いてきた及川。この理屈で言えば、相手を本気で叱る人イコールいい人になる。
つい先日のこと。
作曲家のデモを預かった制作事務所の人が、メールに添付してその音を送ってくれた。しかし、ファイルがどうしても開かない。連絡をしたところ、今度は違う方法で送ってみると言う。ところが、それもやっぱり開かない。
「ごめんなさい。やっぱり開かないんですけどぉ…」
「そうですか…。失礼ですが、及川先生はパソコンは何をお持ちで…?」
私のPCはMacのiBook。おまけに、時代遅れのOS9.2。そのせいなのか、送られたファイルが開かないことがしょっちゅうある。
そのように告げた途端。
「申し訳ありませんっ! すぐに郵送でお送りさせていただきます」
うちのMacにはOS10も付いている。なのに、一度覚えたからと頑なに9.2を使い続けている。きっと悪いのは私。なのに、先方にめちゃくちゃ謝られてしまった。
また、反対に私の方から、開かないファイルを送りつけてしまうことも多々ある。原稿や写真や音などなど、メールにピッとくっつけて送る。一種類しかやり方を知らないので、開かないと言われたらそれまで。違うやり方で送ることはできない。ごめんねと言うしかないのだ。
でも、その場合でも、本当にすみません。申し訳ありません。失礼いたしました。と、相手に深く深くお詫びされる。なぜかいつもトラブルの原因になっている当人より、全然悪くない相手の方が謝ってくれるのだ。
そのことを友人に話して、どうしてだろうと問うたら、返ってきた答え。
「人徳」
そおかぁ…?。
「眠子さん、ダメですよぉ。仕事で使っているんだから、もっとちゃんコンピュータのことも勉強しなきゃ」
そんなふうに私を叱ってくれる人には出会わないのである。っつうか、そんなことを言おうものなら、何十倍にもして言い返されるか、下手すると殴る蹴るされると思われているのかもしれない。
要するに、機嫌を損ねずとりあえず謝ってすませることで、臭い物に蓋をされているような状態。私は生ゴミか。相手も身の安全を図っているのであろう。
また、私もズルいから、もし何かトラブった場合、相手が怒りだすより先に軽く怒ってみせて様子を探る。どっちが悪いと言うよりも、先に怒ったもん勝ちだと思っているからだ。
相手に面と向かっては怒らない、というのが日本人には多い。ものすごーくムカついているのが誰の目にも明らかなのに、とりあえず誤魔化し笑いをしてみたり、黙りこむことで怒りを表現してみたり。相手と戦うことをしない人がほとんどである。
基本的に日本人は喧嘩が下手だということもある。また、嫌われるかもしれないという恐怖感があるためなのか。一度仲がこじれると、相手との関係を修復できないと危惧してしまうのか。とにかく無理をしてでも、温厚な人を演じようとする。
で、自分の中でその怒りをきちんと収められればいいのだけど、たいていはできないから、あとでまったく関係のない人間にその怒りをぶつける。いわゆる陰口の類である。
仕事をしていても、そういうことはよくあって、たとえば誰か一人のせいで何かのトラブルに見舞われたときなど。
みんなその人に対して、めちゃくちゃ怒っている。だけど、やはりストレートに言えないものだから、
「みんな怒っているって伝えておいて!」
私や、別の「はっきりものを言える人」にそんな「依頼」が来る。何度か、怒っているんだったら自分でそう言ってください、とお願いしてみたけど、
「そんなことしたらモメるでしょ」
そう諭されちまったわ。
で、私か別の人が代表して皆の怒りを伝えることになる。ところが、トラブルメーカーくんが反省して、直接本人に詫びを言いにいったりすると、
「ううん、いいのよ。全然気にしてないし…」
おおーいっ、話が違うじゃないか。時には「及川さんが大袈裟に言っただけ」みたいなことまで言われ、こっちが悪者になることに。
私ははっきりと怒りをぶつけてしまうタイプで、また、その場で怒ってしまえば、あとはスッキリしたもの。私の方から相手を遠ざける、というようなこともない。逆に怒りをこらえてしまうほど、しこりとなって自分の中に持ち続けてしまう。それに、いつもプンプン怒っているものだから、周囲はそれに慣れているようなところもある。
だから、このときとばかり私が使われるのだろうが、自分の思いを正直に相手に言えないのってどうかと思うよ。
感情に任せて相手を詰るのではなく、冷静に諭し誤った部分を訂正させる、いわゆる「叱る」という行為においても、それができない人が多い。自分の子供や部下にさえもである。それってなんか、正しい大人ではないような気がするなぁ。
怒るのも叱るのも、どちらにしてもエネルギーが要るし、それなりの覚悟も持たなきゃいけない。でも、それが大人としての努めだとも思うのだ。そんな当たり前のことができない人が多いから、日本は変な国になっちゃったのか。
何かにつけて怒っている。また、すぐに人を叱る。私は彼らにとって「いい人」なのだろうか。もしそうだったら、あんたたちラッキーだったねぇ。
私の夫も、滅多に私に対して怒ったり叱ったりしない。また、最近ではかなり賢くなってきて、私が怒りだすその一瞬前に、
「ゴメンネ」
先に謝ってしまうという技を身につけた。
いずれにせよ、私を本気で叱ってくれる「いい人」は、私の周りにはいないのである。そして、それは私の性質のせいであるのかも。
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