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朝、起きて。まずタバコを一服。その後、猫のトイレを掃除して、それが終わればコーヒーを淹れ、メールをチェックするためにパソコンの前に座る。それが私の日課である。
しかし、清々しい朝(ほとんど昼、時には夕方ということもあるが)の目覚めを、あっと言う間に憂鬱な気分に変えてくれるもの。それは山のように送りつけられたスパムメールである。
ほとんどが「出会い」関係。しかも、あまりにもエロ&グロが露骨すぎて、件名を見るだけでも吐きそうな気分になることもしばしば。
いきなりぶっかけ/淫乱そっくりさん/女子高生とお突き愛/お尻万博2006 セックス中毒スチュワーデス/ティッシュの用意はよろしいでしょうか?/突然、パンツを下ろしたり/ホテル代を払ってでも男にめちゃくちゃにされたい/一発やっとく!/彼氏に内緒でしゃぶらせて/欲求不満の女性満載、割り切っているからすぐ会える…etc.
いやはや…。
これだけのメールが来るってことは、つまりたくさんの需要があるという理由に繋がっているのだろう。当然、儲からなきゃやんないよなぁ。
しかし、上記に書き連ねたメールの件名を見るだけでもわかるように、ほとんどが男性をターゲットにしたものである。私は女。しかも至ってノーマル。ご丁寧に案内されても、当然迷惑なだけである。
一つ一つ削除しているうちに、憂鬱な気分は次第に怒りとなり、こいつら(スパムメールを送りつけてくるヤツら)に対して、どうすれば仕返しできるのかなどと思い始める。時には殺意さえ抱くことも。そう、私は「やられたらやり返す」女。
だけど逆上して、記されたアドレスに返信などしたら、向こうの手口にすっぽりはまってしまうこともわかっている。我慢するしかないということが、復讐心の強い人間にはいちばんキツいのである。
ま、スパムメールを自動的に削除してくれるソフトもあるらしいので、近いうちにこの憂鬱からも逃れられるだろう。しばらくの辛抱である。
そんなこんなで、いつも朝から怒っている私なのだが、ムカつかせてくれるのは何もスパムメールだけではない。知人からのメールでも怒り爆発になることが。
ついこのあいだも、PCのアドレスに来たメール。
「眠子さんへ。大至急ケータイに電話ください!」
はぁぁ…?
そんなに急いでいるなら、おまえから電話してこいよ。って言うか、彼女からは私の携帯にも事務所にも電話がかかってきた形跡がない。何度も電話をしてつかまらなくて、留守電を入れても返信がなくて、それでPCに「連絡して」とメールするのなら理解できるが…。至急の用なら、それなりの行動を取るべきだ。この女はアホか。
私はこの世の中では、嘘つきと、鼻をグググっと鳴らす癖のあるヤツと、笑えないバカ、が心から大嫌いである。
完璧な人間なんていない。いろんな癖や欠陥を抱きしめて生きている。だから人は面白いし、時に可愛く思えるし、せつなかったりするのである。もちろん私自身も、欠けている部分がいっぱいあることは自覚している。
一生懸命にやった結果、失敗してしまう人をなじったりはしない。いろいろ考えて、でも不器用にしか生きられない人を軽蔑したりもしない。自分ができるからと言って、他人も同じようにできるとは限らないのである。なぜなら、その人は自分ではないから。
いくら私が怒りんぼだからと言って、そんなことでいちいちムカつかない。また、年齢も経験も重ねて、怒らないでいられる自分になった。
だけどなっ! 先ほどの彼女のように、頭を使わず「人を動かせてなんぼ」みたいな意識でいる人に対しては、やはり拒絶するしかできない。関わり合いになりたくないのである。
そのままシカトしていたら、きっちり1時間後、
「解決しました! ご連絡いただかなくてもいいです」
というメールが入った。そこには、なぜ急いでいたかなどの理由も書いていなかった。相手にしなくてよかったと思う。
人によっては、突発的な何か(トラブルだったり用事だったり)が入ったとき、一瞬パニック状態になってしまうことがある。人の性質をどうだこうだ言うつもりはないが、「ちょっと立ち止まって考えればいいのに」と言いたくなることも多い。
話は変わって…。
私の友人2人が、先日何かのパーティーで会ったそうだ。人に紹介されて、
「ああ。眠子さんからお話は聞いています」
お互いに初対面だったけど、共通の知り合い(私だ)がいるということで、話はそこそこ盛り上がる。
で、あとで片方の友人からそのときの話を聞いたのだが、
「うちの妻は、とにかく面白い人なんですよ!」
いかに自分の妻がユニークかとか、そして、いかに二人は仲がいいかとか。どんなことにも一生懸命になっちゃって、どこに行くにもいつも一緒で、などと一つ一つ理由を挙げながら、延々と続く彼の「妻自慢」に付き合わされたそうである。
2人は初対面である。ましてや、その人の奥さんはまったく知らない。にも関わらず、
「へぇ。仲がいいんですねぇ」
などと合いの手を入れるたびに、彼の話はどんどん暴走。話をほかに振ろうとしても、すぐに妻話に戻される。
私は彼の奥さんに何度も会ったことがあるが、特別面白い人でも変わっている人でもない。いわゆる「ふつうの女の人」である。私は他人の家庭のくそ面白くもない日常話に付き合わされるのは嫌いだし、彼もそのことをよーくわかっているのか、私には滅多に妻自慢をしない。
「よく怒りださずに、我慢して聞いてたねぇ…」
友人にそう言ったら(私ならきっととっくに怒りだしてる)、
「ボランティアでね、老人ホームに行ったりすることが多いし…。ボケ老人の話をずっと聞いたり。まぁそういうことに慣れているから」
ダンナが「うちの妻は面白い!」と自慢しても、世間的にはさして面白くないことが多い。決して野沢直子や森三中の大島美幸のような妻ではない。奥さんが面白いのは、ほとんどの場合そのダンナさんにとってだけであり、それを他人に延々と自慢するのはどうしたもんか。
うちのダンナも人様にそんなことを言ってなきゃいいがと思いつつ、私を知らない人から、
「あなたの奥さんはどんな人?」
そう訊かれたら、どのように説明しているのかを問うてみたことがある。
「ワタシの奥さん? 朝からプンプンしてる人よー」
…そのとおりである。文句あっか? |