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2006年9月23日(土)
34.言葉で遊ぶ

 久しぶりの更新である。
 なぜこんなに長いこと更新を怠っていたかと言うと、本業(作詞家業)の方で頭がいっぱいだったからである。それと、自分の考えや日常を語るのに飽きてしまったからでもある。
 忙しい忙しくないに関わらず、一つのことに気持ちを取られると、ほかのものに興味をなくしてしまう。何事も長続きしないのは、それが原因なのかもしれない。

 自分のことを書くよりも、私は私というフィルターをとおして物語を生むことの方が、明らかに向いている。それも小説のように長丁場の作業ではなく、そのときの状況や体調さえも影響してしまう作詞という瞬間芸が好きだ。
 曲や歌手とのコラボレーションでもあり、限られた短い文面の中で、いかに自分の伝えたいことを書けるか。聴く側に何を感じさせられるか。そういった切磋琢磨が楽しいのである。

 作詞家の意図していることが、時には伝わっていかないことがある。それどころか、ディレクターや歌手など身近にいる人たちにさえ理解されないこともある。
 だけど、そんなこと当然だ。ものを書くなんて一種の自己満足、下手すると自慰に近くもあったりするので、自分の思ったことがすべて相手に届くなんて思う方が不遜である。

 私は歌詞の中で「仕掛ける」ことが多い。それはささやかないたずらだったり、ダブル(トリプル)・ミーニングと呼ばれるものだったり。いわゆる「言葉遊び」である。
 しかし、巧妙なレトリックを使って、自分ではめちゃくちゃ成功したような気持ちになっていても、誰一人として気付いてもらえないことがある。それが面白かったり、時にははがゆかったり。だから、作詞という仕事を続けられてきたのかもしれない。

 たとえば。発売をしてからもうずいぶん時間が経ったので、今さらながら発表すると。
 Rie ScrAmble『文句があるなら来なさい!』の中のフレーズ。
♪神様など頼らないで
 Ah…Men イライラする
これの2コーラス目同メロのフレーズは、
♪あなたらしさ カタチにして
 Hey!Men わからないの
となっている。この詞を書いて行ったとき、プロデュースで作曲の荒木真樹彦くんに、
「このAh…Menという部分、2コーラスと同じくHey!Menにしちゃいけませんか?」
 というふうに聞かれた。「Hey!Men」とする方が、メロディー的にもノリがいいのである。
なのに、なぜあえて「Ah…Men」と書いたか…。

 言葉に長けている人ならすでにお気付きだと思うが、「Ah…Men」はその前の歌詞「神様」にかけているのである。「Ah…Men」、つまり「アーメン」である。
 そういう言葉のいたずらはなかなか楽しい。ま、言ってみれば小細工だがね。気付いてくれるかな、それとも誰も気付かないかな、なんて思いながら遊ぶのである。

 歌詞ではないが、タイトルとして。
 すごーく売れたアルバムなのに、きっと誰も気付かなかっただろうと未だに思っているのが、新世紀エヴァンゲリオンのサウンド・トラック盤に収録されている『無限抱擁』という歌のタイトルである。
『無限抱擁』と書いて、「むげんほうよう」と読む。これは誰でもわかる。しかし、『夢幻泡影』という四字熟語はご存じだろうか。こちらも読み方は「むげんほうよう」と同じである。

【夢幻泡影(むげんほうよう)/夢と幻と、泡と影。人生のはかなさを表す語。
出典は金剛般若経、元来は仏教語。類語として泡沫夢幻】

 そういった意味を持つ言葉と、いつまでも抱きしめる(無限抱擁)という、まったく逆の意味を持つような言葉をかけあわせているのである。
 人生ははかない。だからこそ、命の尽きるときまでずっと抱きしめていてほしい、というような思いがタイトルに込められている。
 だけど、これに気付いた人はまさに上級。書いた本人でさえ、たまたま人にもらった四字熟語の辞書をパラパラめくっていたときに偶然見つけたもので、それまでは全然知らなかった。もちろん金剛般若経も読んだことはなし。

 エヴァンゲリオンがブームになってから、『残酷な天使のテーゼ』や『魂のルフラン』の歌詞はインターネット上などで分析され、様々な臆測がなされたようだが、きっと『無限抱擁』のタイトルまで追求してくれた人は、おそらく皆無だったろうと思う。
 エヴァンゲリオンの謎とはまったくもって関係がなく、実はこんな仕掛けがされていましたという、今さらながらの告白である。

 ところで話は変わるが、エヴァンゲリオンの続編が新たに映画になって、来年公開されるそうである。10年前に劇場版パート2までやっておいて、結局ストーリィーを終了できなかったので、その続きをやろうというわけである。
 商魂たくましい、と言うべきであろう。自分が関わってきた仕事だと、その根性にも好感が持てる。




 
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