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2006年5月25日(木)
26.勝ち組負け組

 ちょっと前、酒井順子の『負け犬の遠吠え』という本がベストセラーになった。「30代、独身で子ナシは負け犬なのです」というやつである。
 でもって案の定、いつまでもヨメに行けない(行かない)女たちは、世間様から「負け犬」呼ばわりされることとなった。
 さらに同じ頃。IT長者なんていう言葉もちょっとしたブームになって、若くしてがっつり金を稼いだ人たちは「人生の勝ち組」と言われ、六本木ヒルズに住んでアイドルや女優たちにもモテモテであった。
 負け犬たちの中には、そういう金持ちたちとの「セレブ婚」を夢見る人たちもきっと多かっただろう。
「アタシが今まで負けてたのは、きっと誰よりも幸せになるためなのよ!」
 てなもんか。

 でも、『下流社会』や『年収三百万円を生き抜く時代の経済学』なんていう本がヒットしちゃったら、今度は逆に貧乏人の方がエラいみたいな風潮になってきちゃったりして、おいおいって感じである。
 日本人って、あくまでも流行りに振り回されやすい人種なんだなぁ…。

 で、そういう勝ってる負けてるみたいな話を、先日友人たちとしていたとき。ふと我を振り返って、
「ねぇ…。30代後半で結婚したと思ったら、いきなり半年で離婚。もちろん子ナシ。でも、30代の10年間で3億円以上の金を稼いだ、ってな女は果たして勝ってるの、それとも負けてるの?」
 思わずそう訊いたら、みんな一瞬黙りこんだあと、
「まぁ、論外ってもんでしょうな…」
 と答えられた。どこのグループにも入れてもらえない。勝ってるのか負けてるのかさえ判断不能、ってことか。
 しかし、私を指して「論外」と言った友人も、若くして結婚しバリバリ仕事をしながら、専業主夫のダンナの面倒を見ていた。同じく論外グループの一員である。

 それでも今まで、自分たちのことを特殊だとか道から外れているとか思ってこなかったのは、類は友を呼ぶということわざどおり、私たちの周りにはいわゆる「普通の人」たちが少ないせいだからかもしれない。
 実際に私の周りを見渡しても、「ダンナと子どもがいる生活」をおくっている女性が非常に少ない。
 バツ1にバツ2。結婚生活は続いていても子どもなし。子どもはいるけどシングルマザー。あとは行かず後家。…そんな女ばっかりである。
 もっと言うと、私の友人のほとんどが仕事を持っていて、経済的にも精神的にも自立している。いわゆる甲斐性のある女たちである。

 そして私自身を含めて言えることだが、経済力のある女というのは実に堪え性がない。
 仕事でさんざんイヤな思いをさせられているんだから、せめてプライベートくらいは穏やかに、言い換えれば自分の好きにやりたいのである。なんで傲慢な夫に振り回され、我慢して人生をおくらなきゃいけないのか。
「アタシ一人でもやっていけるもーん」
 てなわけで、くそったれな男とはさっさと手を切り、極楽な独身生活に戻るのである。もしくは、それをわかっている人たちは、最初から結婚なんて選ばないのさ。

 1度目の結婚&離婚で懲りたはずなのに、それでも私が2回目の結婚に踏みこんだのは、そういう自分の暴れん坊な部分を認めて、さらには学習もして、
「この男であれば、私のやりたいように生きられる」
 と思ったからである。
 私のペースに合わせ、暴力(実際に手は出さないけど)にも耐え、そんでもって一人でも勝手にやってくれている男でなければ、少なくとも「あんたより自分が大事!」と言い切ってしまう女とは暮らせない。

 いざ足腰立たなくなれば、とっとと老人ホームに行けるくらいには小金も持っている女に向かって、
「誰のお陰で暮らせていると思っていやがるんだ!」
 そんな言葉は通用しないのさ。
 わがままだと呼ばれても結構。わがままに生きていきたいから、頑張って自立してきたのだ。

 まぁ、そういう女が私の周囲には多いのだが、でもそれってやっぱり世間から見れば、論外のグループに入るのだろうと思う。
 マスコミの手を借りずとも、負け犬だの勝ち組だの下流生活者だの、とにかく「かたち」の中に自分を入れたがる人たちは多いものな。
 また、人と違う形態の生活を営んでいる人たちに対して、批判をしたり道理を説いたりしたがる人間も多い。
「そういう生き方もアリ、じゃないの?」
 あっさり思ってしまえないのは、むしろ嫉妬と羨望の裏返しなのか。

 勝ち組の象徴だったホリエモンは逮捕され、負け犬からの大逆転、セレブ婚でみんなに羨ましがられた杉田かおるは数ヶ月で離婚。人生なんて、どう転ぶかわからないのである。
 いったん入れた「かたち」の中からはみ出してしまったとき。また違う「かたち」に自分を入れようとするだけなのだろうか。
 幸せのかたちにこだわらず、しなやかに、そしてあくまで自分の人生を生きようとしている人たちは、私の周りにたくさんいる。彼女たちは強く、そして美しい。




 
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