及川眠子HOME
Diary INDEX 2005


<<前のページ | 次のページ>>
2006年4月19日(水)
21.年齢相応

 頑ななまでに自分の年齢を言いたがらない女性たちがいる。
「自分の年齢を言っちゃうと、若い人たちが萎縮してしまうことがあるから」
「ああ僕よりずっと上なんですねぇと、妙に敬遠されたり恭しく扱われたりするから」
 なんてことを理由にするが、私なんてどっちかと言うと若者に萎縮されたり丁寧に扱われるのが大好きだから、若いヤツにほど自分の年齢を言う。
「ほれほれ。おまえよりずっとたくさん生きてきたんだぞ。尊敬しろよ。何なら肩の一つでも揉んでみろ」
 てなもんである。

 敬遠されるのももちろんオーケー。たかが年齢ごときでビビるような相手とは、はなから付き合う気などないのさ。
 むしろ、私の年齢を言ったときに、
「ありゃ! ずいぶんお若く見えますねぇ」
 と言われることが多いから、ちょっとばかし嬉しい。舐めたような口をきくヤツには、あえて私の年齢を言うこともしばしば。

 音楽業界でチャラチャラ生きていると、いつまでも若いと自分自身勘違いしていられるから、格好も雰囲気もそこらへんのギャルと変わらない。要は「落ち着いてない」ということなのだが、それが若く見える原因になるのだ。
 でも、若い子に混じって、若い子と同じように…なんて気持ちはまったくない。なんで若者に迎合しなきゃいけないよ。若者は年上の私に合わせていればいいのである。

 私が何の抵抗もなく自分の実年齢を言ってしまえるのは、きちんと46年間を生きてきたという自信があるからだ。
「顔に刻まれたシミやシワも、私の生きてきた証し」というふうに言い切る人たちもいるが、それとはちょっと違う。わかりづらいかもしれないが、「46年分を46年かかって生きてきた」という自負心にも似た気持ちなのである。

 また、おばさんという言い方に、非常に抵抗を感じる人たちも多いようである。さらに、そんな人たちに対して、あえておばさん呼ばわりすることで、相手を傷つけたような気持ちになっている人間もいる。
 それってただのバカじゃん。若さイコール勝っている、という理由にはならねぇぞ。
 人はその生きてきた時間の中で何をしてきたか、ということが大事なのである。

 このあいだインターネットで、私を表して「著名でお金持ちのおばさん」という書き込みを見つけた。さして著名でもお金持ちでもないのだが、おばさんなのは正解である。
 たぶん書いたのは「無名で貧乏な若い子」なんだろう。わざと相手を貶めるために、女性という言い方ではなくおばさんと書いたのだろうが、おばさんなのがデメリットだと思っているのは、おばさんになることを恐れる人たちだけである。
 それよりも「著名でお金持ちのおばさん」と「無名で貧乏な若い子」と、どっちの方が世間が大切に扱ってくれるかは一目瞭然。そういう嫉妬も含んでの言い方なんだろうなぁ。

 少し前までやっていたCM。森高千里の『私がオバさんになっても』の替え歌で、
♪私がオバさんになったら、あなたはオジさんね…
 というのがあり結構ウケたけど、まさにそのとおり。
 彼ら彼女らがおじさんおばさんになる日はいずれ来る。だって、時間に誰の身にも平等に訪れるからさ。そのときに、「無名で貧乏なおじさん(おばさん)」であることの方が確率が高いのである。
 だけど、きちんと自分の年齢を生きてきた人たちは、きっと肩書きや経済的にどうであれ、胸を張って自分の年齢を言えることだろう。

 若さなんて消耗するだけである。また、私はまだ20代よと若さを誇っていても、15歳のおじょーちゃんから見ればしっかり年寄りなのである。
 若いうちだからできることってある。たとえば貧乏や苦労は、若いうちだから耐えられるというもの。私も何年かはそこそこの貧乏生活を強いられていたが、まだ20代の時だったから平気だったんだろう。あのときの苦労を今しろと言われたら、絶対にイヤだと思う。
 若さと引き換えに苦労をくれると言われれば、おばさんのままで結構ですから、今の生活でいさせてちょうだいと言うだろう。また、若い頃に戻りたいとも思わない。若い頃と同じだけの体力があれば、とは時々思うが。

 先日、韓国のロックバンドの仕事をした。
 韓国はまだ儒教の教えが強く根付いていて、年上の人間に対しては敬意を払って接する。
 プロデューサーや私がスタジオに入っていけば、その瞬間必ず彼らは立ち上がり、自分たちの座っていた椅子を譲ろうとする。自分たちがお茶を飲みたいときは、必ず先に私たちにお茶を勧める。
 当たり前のことなのだが、当たり前に感激した。ってことは、日本ではそういうのが当たり前じゃなくなっているからなのか。
 年齢を重ねるものはいいもんだ、と思わせてくれることが、日本では少なくなっているのかもしれない。




 
最新情報 メール