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2005年12月7日(水)
93.声とIQとの関係

「声の高さとIQは反比例する」
 そう言い放った友人がいた。要するに、声が高ければ高いほどIQは低い(頭が悪い)ということである。
 統計にも何にも基づいていない単なる臆測論だとは知りつつ、しばしば「やっぱりそうだ」と思う場面にめぐり会うことがある。

 先日も、あるレストランに行ったとき。隣の隣に座っている客がとにかくうるさい。男2人女3人のグループなのだが、酒の勢いもあってか、ずいぶんと盛り上がっている。
 いったい何について喋っているのか、そんなに盛り上がれる話の中身とは何なのか。及川、興味もあってつい聞き耳を立ててしまった。

 しかし、話の内容はほとんど聞こえてこない。私の耳に届くのはただ、
「やっだぁー! 信じらんなぁーい! キャハハハハ!」
「ええっ! うっそだぁー! ギャハハハハ!」
 という、女2人の相槌とも返答と言えない言語と笑い声だけ。
 男2人(同僚風)と女1人(先輩風)の誰かが何かを言うたびに、その声の主たちは異常と思えるほどに反応し、笑い転げるのである。そして、その声がやたらとカンにさわる。彼らの隣に座ったカップルなど、あまりのうるささに顔をしかめるほどであった。
 こいつらバカか、とつい心の中で悪態をついたのだが…。

 酒を飲んでいれば、自然と声も大きくなる。また、結構広いレストランなので、ある程度の音量で喋らなければ相手の耳に届かない。事実、私の反対側にいたグループも大きな声を放っていた。なのに、なぜか彼女らの声だけに耳がいってしまうのである。
 で、しばらくしてから、ふと気付いた。この女2人はものすごく高い声の持ち主だということに。

 そういや、私の場合。レストランや電車の中などで、うるさいなぁ、不愉快だなぁと感じる声は、たいていソプラノ・ヴォイスである。
「よく通る声ですね」
 そんなふうに褒められてきたのかもしれないが、オペラでも歌わない限り不必要なほど高い声。
 そんな声を耳にするたび、せめてもっと小さな声で喋れないかと、相手の胸ぐらをつかんで揺さぶりたいほどのイライラ感に包まれるのは、きっと私だけではないだろう。

 また、そういう場面に出くわしたときは、
「声の高さとIQは反比例する。頭の悪いヤツには関わらない」
 心の中で、友人が放った理論を呪文のようにくりかえすだけなのである。
 しかし、なぜ声が高いだけでバカに思えてしまうのか。女性の場合に限ってのみだが、最近気付いたことがある。

 私自身はとても声が低い(これは決して、だから自分は頭がいいと言っているのではないよ)。子どもの頃から低くて、無差別にかけてくる電話のセールスの人などからは、
「あ、奥様ですか?」
 電話に出た瞬間に、そう訊かれることも多かった。
 おまけに、年齢を増すごとにどんどん低くなっているようで、さらには妙にドスのきいた喋り方をするものだから、先日もやっぱり電話セールスのおばはんから、
「あ、奥様ですか?」
 と訊かれ、うちでは「奥様」は母親のことだから、違いますと答えたら、
「じゃあ、大奥様ですか?」
 そう付け加えられた。ものすごーくムッとしながら、でもどういうふうに返答していいのか一瞬迷った挙げ句、
「お嬢様です」
 ついそう答えてしまった自分が悲しかった。しかし、そのおばはん。すみませんと言って、そのまま電話を切ってくれりゃいいのに、ガンガン突っ込みやがる。
「あらっ。じゃあ20代の方ですか?」
「いえ…、違います」
「そうよねぇ…。お声がしっかりしてらっしゃるものね。じゃあ30代?」
「…そんなもんです」
 妙に引っ込みもつかず、思わず嘘を言ってしまった及川である。40代半ばのくせして自らお嬢様と名乗ってしまったのは、さすがに恥ずかしい。

 さて話はそれたが、なぜ声が高いとバカに見えるのか、の話題に戻そう。
 私自身の経験や周りの友人の意見をもとにすると、声の低い女はたいていそのことをコンプレックスにしてきている。
 声が低いイコール可愛げがない、しっかりしている、男の子みたいというイメージで括られるゆえ、いかにも女の子っぽい言動をすることにためらいを覚えた人も多いだろう。

「やっだぁー!」「ほんとぉー!」「えーん!」「ひっどぉーい!」
 まるでさとう珠緒語録のような言葉は、声が可愛いもしくは高い女にしか似合わない。実際、上記にあげたような言葉は、私は若い頃でも使ったことがない。
「やだよ!」「ほんとに?」「おいおい!」「ひどいっ!」
 同じ意味なのに、言い方が変わるのである。
 そして、同じように言っているだけなのに、先にあげた言い方の方が何となく「のうたりん」に聞こえる。女の子にありがちな言い方をすればするほど、知性とはほど遠くなってゆくのだ。

 また、声の低い女たちは、女らしさや可愛さで勝負しようとすればハナから負けるのがわかっているから、別の部分を磨いていったという理論も成り立たないか。
 以前にも書いたが、最近の女性シンガーや作家、アナウンサーなどは、比較的声の低い人が多い。特にアナウンサーの場合、ニュース番組に出ているのはほとんど声が低い女性たちだ。高い声はバラエティー向き、やはり知的な作業には向かないのかも。

「いやぁーん! それってありえなぁーい! キャハハハハ!」
 けたたましいお姉ちゃんたちの声にムカつきながらも、声が高くて可愛いと思われるのも今のうち、あと10年も経てばただのうるさいおばはんじゃ、と心の中で呟くのであった。
 あ。ちなみに、及川は高い声の男もきらいですわ。その理由はいずれまた。




 
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