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うちのトルコ人は車が大好きである。寝ているよりもごはんを食べているよりも車を運転している方が好き、と言い切る男である。
博打をしない。酒もほとんど飲まない。クラブなどで夜遊びもしない。働くことだけに人生を費やしてきた男の、たった一つの趣味が車なのだ。
その趣味が高じて、最近フリーのコーディネーター兼ドライバーの仕事を始めた。それこそ一日中車の運転をしている仕事になったわけだ。
私なんかも好きなことをそのまま仕事にしてしまった人間であるが、どんなに好きなことでも仕事になってしまえば、わりと冷めてしまう。昔みたいに貪欲に音楽を聴くこともなくなった。
寝る暇を惜しんで詞を書いていた日々が嘘のようである。まぁもちろん仕事となれば徹夜だってするが、決してタダでは書いたりしない。印税やギャランティーと引き換えにものを書くわけである。
それが趣味を仕事にしてしまった人間の悲しさであり、運の良さでもあったりするわけだが。
で、うちのトルコ人もさすがに休みの日くらいは車なんて乗りたくなくなっただろう、と思いきや、
「今日は休みだから、ドライブに行こう!」
と言ったりする。一日中運転していて、まだ足りないのかという感じだ。そのうち車の中で暮らしだすかもしれない。
ずっと前に付き合っていた人に、
「あなたには趣味ってもんがないの?」
とすごーくなじられたことがあったのを、先日フト思い出した。
は? 趣味? そんなもんありまへん。というふうに答えると、
「あなたとは分かちあえるものがない!」
とキッパリ言い放たれた。何なんだよって感じ。そのあとすぐに別れちゃったけど。
しかし、趣味って誰かと分かちあうものなのか? 夫婦や恋人同士で共通の趣味がないと、お互いを理解したり尊重しあったりできないのだろうか。それもまた薄い信頼関係だなぁ。
そのことをある友人に話したら、
「恋人同士でやるにはテニスがいちばんいいよ」
と教えてくれた。テニスコートに二人で向かいあって球を打ちあう。その距離感が妙に愛しさやせつなさをそそるそうなのである。
卓球だと距離が近すぎるし、バドミントンだと球(羽根)の届く速度が速すぎる。バスケットボールやサッカーはお互いの闘争心を煽りすぎることになり、ドッジボールも喧嘩になりかねない。ゴルフは仕事の接待を思い出させてしまうし。また、キャッチボールはお父さんと息子が心を通わせるためのものだからダメ。
「さらに、ファッションもそれなりに凝れるものと言えば、やっぱりテニス。恋人同士に向いている球技は、何と言ってもテニスしかないよ」
彼はそう言い切ったが、なんで球技にこだわったのだろう…。
まぁしかし、同じ趣味を持つってことも、きっと時には大事なのかもな。
たとえば二人の休みの日。さて今日は何をしましょう、という段になったとき。趣味が同じならやることは自ずと決まっていく。特に付き合って間もない恋人同士や新婚夫婦は、休みの日は一緒にいたいって思うもの。
一緒にいられて、同じことを楽しんで、というのは倦怠期を遅れさせるためにもいいのかもしれない。
でも、そんな共通の趣味を持っていない夫婦もいる。かと言って仲が悪いわけじゃなく、むしろ世間に自分たちの仲の良さをアピールしたいと思う人たち。
そんな人たちが行く先は「夫婦共作のホームページ」であったりするのだ。
あたたかさとか優しさとかをイメージしたレイアウトに、二人のエピソードやツーショット写真、世の中へのメッセージなどを盛り込んで、ホームページのタイトルもズバリ『ユースケとエミコの部屋』なんていうやつ。世の中に向かって、
「私たちはこんなに仲がいいんですー!」
と訴えているホームページの多いこと。
あれを「公開セックス」と実にうまく名付けた友人がいたが、まさにそのとおり。読んでいる方は、ただただ赤面するばかりである。
時には興味もあって、他人のセックスを覗いてみたいもの。だけど、素人たちのセックスはプロが作ったAVのように演出がなされていないから、その生々しさに思わず「げっ」となってしまうのだ。
習い事を長くやっていれば、それをどこかで披露したい気持ちになる。
夫婦円満のため。お披露目のため。そして、趣味と呼べるものを持つため。夫婦でのホームページ制作は、その要素を完璧に満たしていると言えよう。
私自身には残念ながらそういう趣味はないので、自分自身のホームページをコツコツと運営していくだけである。
ああ、そう言えば。
今さら気付いたが、タダでものは書かないと言いながら、このDairyは誰かから発注があったわけでもなく、またお金をもらっているもんでもない。言ってみれば、私の趣味ってやつか。
しかし、趣味はすべて金に換えるのが及川の主義である。
いつでも売りまっせ。なんなら企画ごと。
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