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友人とドライブに行ったのだが、道に迷ってしまった。その車にはナビゲーション・システムが付いておらず、どうしようか、誰かに道を訊こうかと言っていたところ、一人の中年男性が通りかかった。
「あっ、あの人に訊いてみれば」
そう言ったのだが、友人は何だか躊躇っている。そこに別の中年男性が通りかかり、彼女はその人に道を尋ねだした。
二人とも同じような格好をした中年男性である。なぜ先の人には訊きづらく、後の人には訊けるのか不思議に思ったけど、きっと彼女にとっては何かが違うのだろう。
そう言えば、自分だって人に道を訊かなければいけないとき、無意識に相手を選んでいるなぁ。間違ってもヤクザっぽい人や何にも考えていなさそうな若者や、不機嫌な顔で歩いている人のところには近付かない。もちろん、ホームレスにも道を尋ねない。
いかにも普通のサラリーマンやOL、主婦といった風情の人に話しかける。あと、お巡りさんね。
私は人に道を訊かれることがめちゃくちゃ多い。多いときで一日3回くらい訊かれる。よっぽど暇そうな顔をして歩いているのか、それとも単純に話しかけやすいタイプなのか。
急ぎ足で歩いている私を、わざわざ呼び止める人さえいる。周りにいっぱい人がいるにも関わらず、である。
台湾や香港に行ってさえ、地元民に道を訊かれる。地下鉄の路線図を指し示しながら、広東語や台湾語でまくしたてられ、
「ごめん、日本人なの」
そう言うと、しまったというような表情をして背中を向ける。日本人に見えないのだろうか。
私自身は典型的な日本人のルックスだと思っているのだが、
「韓国人? 中国人?」
「たぶん台湾よ」
すれ違ったタイ人が、こっちを振り向きながら言いあっていたことも。
ずいぶん前、香港の大衆食堂に入ったときも広東語で話しかけられ、困った顔をしていると、
「香港人じゃないのか?」
「違う」
「じゃあ、大陸か?」
「違う」
「そうか、韓国人か」
「日本人だ」
「ええっー!」
店中の人間にビックリされたことがあった。おそらく日本人で一人で食堂に入ってくる女など、当時いなかったからかもしれない。
道を訊かれる、に話を戻そう。
私が住んでいる地域は芸能人の家がたくさんあるのだが、5月の連休や夏休みになると、いかにもこの地域の人たちじゃなさそうな家族連れが地図を片手に歩いている光景をよく見掛ける。
そして、スーパーの買い物袋を提げた私が通りかかろうものなら、すぐさま駆け寄ってきて、
「すみません。加藤茶さんのお家はどこにありますか?」
「ちょっとお尋ねしますが、タモリさんのお宅はどのあたりでしょう?」
訊かれる羽目に。
家の中に入れてもらえるわけじゃないのに、訪ねて行っても意味ないじゃんと思ってしまうのは私だけなのか。
家の前で写真を撮ったり、
「はぁー、ここが○○さんちなんだー」
と嬉しそうに見上げたりしている。見られる側の芸能人も大変だなぁ。
しょっちゅう道を訊かれるってことは、つまり「話しかけやすそう」なオーラを出しているわけで、以前は道でアンケートや募金、キャッチセールス、宗教活動など様々な人から声をかけられた。
そして、暇だとつい立ち止まり話を聞いてしまうものだから、挙げ句何度も口論になったことがある。
しかし、最近ではなぜかほとんど声をかけられることがない。相変わらず道は訊かれるのだが、アンケート用紙を持ったお姉さんたちは私と目が合っても無視してくれる。
この違いは何なのか。
明らかにAVや風俗のキャッチセールスなら相手にされなくて当然だが、対象者の性別、年齢を選ばない募金でさえ、私のところに来ようとしない。また、ティッシュペーパーももらえないことが多い。
その理由を聞いたみたいと思う及川である。
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