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「親しき仲にも礼儀あり」
実に美しいフレーズだと思う。礼節を重んじる古き良き日本人の性質がそのまま表れている感じがする。
一緒に温泉に行っておっぱいを見せあう仲であろうと、ずぶずぶの恋愛の一から十まで語りあう間柄であろうと、礼儀はきちんと弁える。それはとても大事なことだと、年をとるほどに思うのである。
相手は自分の分身ではない。立ち入っていいことと悪いことがある。
さらには、相手に何かを与えられたりお世話になった場合は、ちゃんとお礼をするのが正しい大人の付き合い方であるとも思う。
そんな水くさい、と思うかもしれないけれど、してもらったことに対して礼を返すのは、相手との距離感を保つためにもいいことではないだろうか。
困ったときに誰かに頼る。その人は自分のために時間を割いて動いてくれる。そのことに対してお礼をするのは、感謝の気持ちを決して忘れていないよという意思表示でもある。
また、もともと日本の習慣はいわゆる「ワンウェイ」ではなく、「ツーウェイ」である。
うちの母親の世代を見ていると、たとえば何かを贈った場合は、必ずと言っていいほど相手から返ってきている。
「これ親戚から送ってきたものなんですけど」
そう言って持っていくと、一週間以内に何かが返ってくる。お菓子やら果物やら、時にはわざわざ買ってまで返してくれる人もいる。
「付き合いだけで結構な金がかかる」
母親はそうぼやくけれど、私は決して悪い習慣ではないと思っている。
しかし、面白いなぁと思うのは、そういう風習をきちんと守っているのは、ほとんど地方出身者なのだ。年寄りでも東京や東京近郊の県の出身者は、もらったきりの人も多い。
そういうのって、やはり地方でずいぶん違うんだろうか。和歌山県人は基本的にケチなのだけど、付き合いとか礼儀とかに関しては金を惜しまない。要するに、見栄っ張りが多いってことなんだけどね。
以前、知人が結婚したというので、お祝いにと現金を包んで贈った。披露宴には参加していないので、金額は1万円。まぁ妥当なところである。
だけど、本人にありがとうとは言ってもらったものの、それっきりである。普通は半返しするもんじゃないのかと思ったのだが。
こんなの使えないよー、と言いたくなるようなフリフリの食器を送ってこられても困るだけだけど、何も返ってこないのも寂しいものがある。
それより、返礼の習慣がないのか。はたまた無知なのか。親が何も言わないのか。妙な疑問点だけが胸の奥に残ってしまった。
時には、香典返しさえ来ない場合がある。これも地方によって違うのだろうか。
「香典返しを送ったのに、みんな届いたよって連絡くれなくてさ」
そう言ってたヤツもいたが、普通は香典返しが届いたときは、遺族の悲しみを蒸し返さないためにも連絡はしないものである。なんで40歳も50歳も過ぎてそんな常識を知らないんだよ、と親の教育を疑ってしまう。
ああ。ってことは、早い話が親の躾なのか。
人様の家に招かれたときに、自分ちの冷蔵庫の中にあった食べかけのチョコレートを持ってきた人もいたが、きっと親がそういうことをしていたのだろう。
ところで。私は最近ではトルコにしか行かないし、お土産も人を限定して買うようにしている。いつもお世話になっている人とか、相手側も旅行に行くたびに買ってきてくれる人だとか。
今まではまんべんなく友人へのお土産を買っていたのだが、意識してそういう習慣をやめようと決めたからである。
また、私がお土産を買っていっても、彼ら彼女らが旅行をしたときに買ってきてくれるかと言うと、そうでないことが多い。
「今度、バリ島に行くの!」
さんざん私に話した挙げ句、帰国したあとは何の連絡も来ない。
きっと向こうでは忙しい日々をおくっていたことだろうし、無駄なお金を使う余裕もなかったことだろう。だから、べつにお土産を買ってきてほしいとは思わない。思わないが、気持ちの問題だよなぁ。自分が大事にされていない感じがしてしまうのさ。
「いつも買ってきてもらってごめんね。私が行ったときには、買ってくるからね」
そう言ってたくせに、旅行に行くことさえ知らせてもらえなかったこともある。
そうなるともう、もらうのはいいけど返したくない、というふうにも取れてしまう。うがった見方なのかもしれないけどね。あんたとは本当に友達だったのか、とその関係さえ根本から疑うことに。
私自身は何かを返してもらいたくてお土産を買ってきているわけではなく、日ごろお世話になっているお礼のつもりでもあるのだけど、ついこのあいだも「もらった」ということが心苦しく思えたのか、
「お礼をするから」
と言い張る。もちろん私はいらないと拒否したのだが、絶対にお礼をするから何が欲しいとまで訊かれた。
しかし、その後はなしのつぶて。
べつにそのことを恨んでいるわけではない。ただ、別の用で連絡をとったときに、友達のお父さんが亡くなって忙しいだの、実家に帰らなきゃいけないだの、さんざん言い訳を並べ立てられてしまった。そっちの方がずっと悲しかった。もちろん、半年以上経った今でも、その「お礼」は届かない。
お礼をするなんて言わなきゃいいのに。私は何かを期待してあげたわけではないのだからさ。
自分が人にそういうことをされたらどう思うのか、ということをまず考えた方がいいと思う。秘密で旅行に行かれたり、いつもお土産を買ってきてあげてる人に自分は無視されたり、約束を破られたりすることを。
それが「親しき仲にも礼儀あり」という言葉が持つ、本来の意味だと思う。
また、お土産を買ってきたよと、別の友人に連絡を取ったら、
「うちまで持ってきて」
と言われたこともあった。持っていこうとは思っていても、先にそう言われてしまうと、やっぱり腹が立つものだ。
それもこれも親の躾のせいなのか。
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