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2005年6月20日(月)
47.機内ファッション

 旅行に行くと決まったとき、先ず私が考えをめぐらせるのが、どの洋服を持っていくかである。
 でも、それよりももっと思案に暮れるのが、
「飛行機に乗るために、何を着ていこう」
 ということなのである。

 なんでそんなしょうもないことを悩んでしまうのかと言うと、私がカジュアルの定番であるジーンズとコットン・パンツを穿かない人間だからである。
 一応持っていることには持っている。各1本ずつ。でも、あまりにも似合わないもんだから、何度か穿いただけでそのままクローゼットの隅に押し込んでしまった。
 近所のスーパーに行ったり野良着としてならともかく、とても人目にさらす場所にはみっともなくて穿いていけない。
 そして、ジーンズと綿パンを穿かないとなると、かえって着るものの選択肢がありすぎて、結構悩むものなのである。

 しかし、成田空港というのは、なぜあんなに同じような格好をした人たちばかりなんだ。都内ではそれなりにみんな違った格好をしているのに、旅行に行くとなると、まるで約束してあるかのように「妙によそ行きのカジュアル・ファッション」になってしまう。
 特に中年の団体ツアーの人たち。ベージュ系の綿のパンツにポロシャツかTシャツ。それにジャンパー。女性ならポシェット、男性ならウエスト・バッグ。そして、真新しいスニーカー。
 そんな海外旅行の定番ファッションで、内股・小股でひょこひょこ歩く姿は、どんなに遠くからでも、
「あ、日本人だ」
 とわかってしまう。
 若い人は若い人でまた傾向があって、例えて言うならシブヤ系リゾート。
 アロハシャツやTシャツにビーチサンダル。女の子だとタンクトップ、もしくはカラフルなチュニックにローウエストのジーンズ、ミュール。でも、ビーチにいるのとはまた違う感じ。なぜか行く前からすでに日焼けしている人たちもいる。

 正直言って、そういう人たちと混ざりたくないという気持ちもあって、敢えてカジュアルやリゾート・ファッションにいかない及川なのである。
 しかし、台湾やグアムくらいなら、普段渋谷や青山に行くような格好でもいいが、たとえばトルコだと12時間以上のフライトなのである。やっぱりある程度は楽な格好の方がいい。
 一度あまりに考えるのが面倒くさくなって、家のいるときの格好そのままで飛行機に乗ったら、空港に迎えに来ていたうちのトルコ人が私を見るなり、
「げっ!」
 と絶句した。楽すぎる格好というのもよくないみたいだ。

 確か藤原紀香だったと記憶しているが、空港でインタビューをされていたことがあって、そのときの格好がTシャツにジャージ(もちろんブランドものではあるが)、頭にはキャップを被ってスッピン、であった。
 しかし、それは藤原紀香や米倉涼子や長谷川京子だからオシャレに見えるのであって、私がやればまるで生活苦のためにコンビニ強盗に走ってしまいそうな主婦に見えるだろう。
 それくらいは知恵のない及川にもわかるので、さすがにジャージは避けている。

 機内で過ごすには、やはりスカートよりもパンツの方が圧倒的に楽ではある。しかし、ジーンズも綿パンも穿かない、ジャージは(好きだけど)穿いちゃいけない私にとって、家からトルコの空港までのファッションにいちばん頭を悩ませるのである。
 逆にトルコに行ってしまえば、ユニクロか現地で買った服しか着ないので、事前の洋服選びはさして必要ではない。
 力任せに洗うメイド・イン・トルコの洗濯機や、40℃以上のお湯じゃないと溶けない洗剤のことを考えて、向こうでは安い物しか着ない私。まぁ滅多に日本人にも会わないので、妙な見栄を張る必要はないのである。

 そう。見栄を張るのは、やはり日本人に対してのみなのである。
 だから、成田空港を埋め尽くしているよそ行きカジュアルやシブヤ系リゾートな格好はしたくないし、それでいて、打ち合わせに行くときのようなファッションもまたしんどい。

 以前も書いたが、私はトルコ航空のゴールドのマイレージ・カードを持っている。
 これの特典は、空港のラウンジを無料で使えるというのがあるが、飛行機が混んでいるときなどビジネスクラスにアップグレードしてもらえることが多いということだ。実際に、今年だけですでに2回もアップグレードの恩恵にあずかっている。
 しかし以前、「たとえ個人客でもあまりにラフな格好をしていると、どんなに混んでいてもグレードアップはしない」ことが「旅の心得」のような本に書かれていた。航空会社のカウンターの心証を良くするためには、やはりそれなりの格好をしていた方がいいのである。
 また、ラウンジだって通常はビジネスクラス以上の客のためにあるものだ。そこをエコノミーの分際で使っている私としては、エコノミーの客だと周りに気付かれないようにしようという、気配りと後ろめたさもあるわけである。

 楽でありながら、決してだらしなくはない。それでいて、成田空港を利用する客たちとは一線を画したファッション。
 そんなものがあれば、ぜひ教えてほしい。




 
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