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このあいだ友人から電話がかかってきて、
「眠子さんが書いたZEROのCDを買いたいんだけど、在庫ある?」
と訊かれて、一瞬何のことかわからずに戸惑ってしまった。
作詞家が自分の書いた楽曲のCDを買い上げているなんて、まずないと言っていいんじゃないだろうか。少なくともポップス系の作家では、そんな話は聞いたことがない。
私の手元にあるのは、メーカーやプロダクションから送られてきたサンプル盤のみである。それをなくしてしまったとか、誰かにプレゼントしたいとか、そういうことがない限り、自分が詞を書いたCDを自分で買わない。また、サンプル盤を売ったりもしない。
自主制作で作ったものでも、作詞家はそのCDを買い取るということはしない。在庫を抱えるのは事務所やアーティストたちである。アーティストへの気配りで何枚か買ってあげることはあっても、作詞家はあくまで印税で食っているのだ。
別の友人にも、
「眠子ちゃんはCDも売っているわけだし」
と言われた。いや、だからCDは売ってませんってば。
私が書いた詞やプロデュースした作品をメーカーがCD化し、CDショップやアーティストが売っているのである。まぁ売れれば売れただけ印税が入ってくるので、1枚でも多く売れてくれる方がいいのだが。
「でも、アマゾンなんかで買っちゃうと、眠子ちゃんにマージンが入らないでしょう?」
だからさー。CDを売ったマージンで儲けている作詞家なんていないのだよ。
作家が自分の本を出版社から買い上げて、それを売るという話はよく聞く。出版社はたいてい八掛けで卸してくれるので、定価で売っちゃえばちょっと儲けが出るってことだ。
おそらく、それと混合しているのではないかと思う。
私が以前本を出したときに出版社から、
「500冊くらいは買い取ってくれませんか?」
と言われたのだが、大手出版社と言えどそういうことを要求するんだなーとびっくらこいてしまった。
まぁ私自身が出版業界ではまったくの無名であったので、編集者も売れ行きを心配してそう言ってしまったのであろう。もちろん丁重にお断りしたが。
それを思えば、私はかつて自主制作であろうが、またどんなに売れないCDであろうが、買い取りを要求されたことは一度もない。何だかんだ言ったって、音楽業界は出版業界ほど厳しくないのかもしれない。
しかし、作詞家という商売の本当のうま味を得るのは、やはりヒットを出したか出してないかにかかってくる、ということが最近よーくわかった。ヒットを出していなければ、いくら長い間しこしこと書き続けても、一瞬のあぶく銭しか得られることができないのだ。
実のところ、私はここ何年かはまともに仕事をしていない。なんせコンペティションをやらないものだから、来る仕事は限られている。それでも仕事が全然ない人よりはマシだよと慰められることもあるが、本人はあまり気にしていない。
20・30代の頃に気が狂うほど仕事をしてきて、ちょっとくらい休憩したってバチは当たらないだろうし。時代の流れとかタイミングとか、そういうもの次第でまた忙しくなるときもあるかもしれないし。
で、なぜそんなふうに仕事もしてないくせに達観していられる、そんでもって食うにも困っていないかと言うと、過去の作品が金を運んでくれているからである。
去年くらいから、その率は非常に高くなった。下手すると、一生懸命に詞を書いていた新人の頃よりもお金が入ってくる。
まず、W(ダブル・ユー)が『淋しい熱帯魚』をカバーしてくれたことで、そこそこの印税が入ってきた。
次に、5年くらい前に舞台用に書いた『マツケンでGO!』がCD化され、『マツケンサンバ』の勢いに乗って売れたことでも、ちょっとおいしい思いをした。
その次に、『新世紀エヴァンゲリオン』がDVD化された。もちろん私が書いた主題歌『残酷な天使のテーゼ』もそれに使われたので、これもまとまった印税が入ってきた。
そして、パチンコ台である。
『残酷な天使のテーゼ』や『淋しい熱帯魚』、『マツケンでGO!』などの楽曲がパチンコ台やスロット・マシーンに使われ、許諾料と複製使用料が入ってきた。
特にエヴァンゲリオンはすごく人気があって、もうすぐ10万台を超えるそうである。なんと!パート2も年末に発売されると聞いた。パチンコ台は2万台出ればヒットと言われているらしい。
さらには、今もまだ缶コーヒー『ワンダ』のCMで『淋しい熱帯魚』の替え歌が流れていると思うが、これに関しても許諾料と放送料が入ってくることになっている。
私はここ一年間、ほとんどエヴァンゲリオンと『淋しい熱帯魚』と『マツケンでGO!』で食っているわけである。
それにプラスして、以前放送されていた『忍風戦隊ハリケンジャー』がDVDになったり、戦隊ヒーローもののオムニバス盤に楽曲が使用されたりで、途切れることなく印税を運んでくれている。
私なんて、忘れた頃に小さなヒットを出してきた、いわば「小当たり作詞家」である。そんな私でさえ結構おいしい思いをしているのだから、ヒット曲をばんばん出してきた大御所のセンセイなどは笑いが止まらないだろう。
って言うか、やっぱりヒット曲があるとないのとでは後々大違いなんだ。よかった、小さなヒットでも出しておいて…。と、しみじみ思う今日この頃である。
ああ、しかし。
いちばん最初にふれたZEROに関しては、洋楽曲の日本語詞という扱いなので、いわゆるギャランティー、買い取りである。だから、いくらCDが売れても、私のもとには印税が入ってくることはない。
だけど、それが「おいしい仕事」じゃないかと言うとそうではなくて、何曲もまとまって発注があれば、それなりの金額になる。
それに、仕事が少なくなったぶん、より書くことの楽しさを実感できるようになった。韓流ブームに関わっていられることの嬉しさもある。
そして何よりも、仕事をくれる人がいるのは有り難いことである。
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