|
クジというものには、ほとんど縁のない及川である。
そう言えば、一度も宝クジを買ったことがないなぁ。買わなきゃ当たりに縁がないのも当然ってもんか。
でも、宝クジは買わずとも、日常にはささいなクジ引きがある。デパートや商店街の抽選とか、結婚式の二次会のビンゴとかジャンケンゲームとか。そういうものにさえ縁がない。
以前引っ越しをしたとき、カーテンを買いに行った店で抽選券をもらった。それも120枚くらい。
あのガランガランと回すと白玉や赤玉が出てくるやつ。とにかく120回やったところ、私が当てたいちばんいいものは醤油とみりんセットだった。次にいいものは、粉石鹸とふきん。ハズレはポケット・ティッシュで、これがほとんどであった。
重たいカーテンを抱え、さらには大量のポケット・ティッシュ。そのうえ醤油とみりんに粉石鹸である。とても一人では持ちきれなくて、タクシー乗り場まで店員さんに運んでもらい、そのまま家までタクシーで帰った。得したのか損したのかわからない。
なんせお神籤でさえ、大吉や大凶を当てたことがないのである。いつも中吉あたりで留まっている。平凡な人生である。
宝クジで3億円を当てたり、商店街の抽選でハワイ旅行を当てたりする人って、どんな人たちなんだろう。
別の意味で「当てる」となると…。
私はギャンブルもしないので、当てた快感というのは経験がない。一回だけ温泉地でやったパチンコで当たりを出したくらい。でも、それが原因でパチンコにのめり込んだりもしなかった。何度かやっていれば、そのうち当たるんだなぁと思っただけである。これが馬やボートになると、当てた快感はもっと大きくなるのだろうか。
また、基本的に男を見る目がないので、
「さすが眠子さん。あの男は大当たりよね」
と人に言われるような男と付き合ったこともない。第一そんな立派な男は、私の方が好きじゃないのだ。重い荷物が持て、車の運転ができ、電球を換えたりジャムの蓋を開けるのが得意な男で充分である。
そんな私ではあるが、かつて二度ほど大当たりを出したことがある。
私は胃腸が弱いくせに、今までどこの国に行っても水や食べ物に当たったことがない、というのが自慢であった。一緒に来たほかの人たちが、
「おなか痛いよぉ。下痢になっちゃったよぉ」
と泣いているときでも、私一人がケロリとしているのである。
日ごろはちょっとでも食べ過ぎると吐いてしまったり、胃が痛くなったりするくせに、なぜだか日本を離れると急に強靱になる。どこから汲んできたのかわからないような水を飲もうが、道端で怪しいものを買い食いしようが、油まみれの食生活が続こうが、一向に平気である。
そんな及川神話が崩れた第一回目の大当たりは、台湾で。作詞家の鮎川めぐみと一緒に行ったときのこと。
二人とも同じ職業だから、
「同じ所に行って、同じものを見て、同じものを食べて、そして心の中に浮かんだことを言葉にすると、どう違った作品が出来上がるだろうね」
行く前にもそんなことを面白がって話していた。
そして、同じ所に行って、同じものを見て、同じものを食べて食中毒になり、夜中に二人して急患で病院に運び込まれた。
それはガイドブックで見たレストラン。
ちょうど夕食時にも関わらず、客は私たち一組だけ。さらには、店自体が薄汚れていて閑散としている。そのくせ、オーダーしたものが出てくるのが非常に早かった。途中まで食べたのだけど、何だかヤバいなと感じ始め、店を出ることに。
その後ホテルに戻ってからめちゃくちゃ気分が悪くなり、代わりばんこに上から吐いて下から出して。とうとう耐えきれずにフロントに行って、ホテルの人に病院に連れていってもらった。
病院に着いたときには二人とも脱水状態。医者によれば、油が原因だろうとのことだったのだが。
「台湾で食中毒になるなんて珍しいね」
台湾人にも言われてしまった。ベトナムやカンボジアで平気だったのに、ものすごく情けない。
次に大当たりしたのは、去年の夏に東トルコで。以前このDairyにも書いたが、マルディンという国境の町で人の家に上がり込み、そこで飲んだ水がまさに「ピンポ ン」であった。
水を飲んだのは夕方くらい。その夜からおなかがちょっと痛いなーという感じになり、次の日起きた瞬間から下痢がスタート。と言うより、腹の痛みで起きてしまったという方が正しいか。
それでも、そのうち治るだろうと思い、観光に出てしまった及川のおバカさん。
ガイドであるポリス(ポリスに道を訊いたら、そのままガイドになって付いて来た)の話を聞いているときにぶっ倒れ、その場にいた親切なトルコ人観光客に薬をもらった。
で、やっぱり病院に行った方がいいと言われ、一度は病院の前まで行ってはみたものの、その門構えを見て拒否。自力で治すと言い張りホテルで寝ていたが、腹の痛みと下痢はひどくなる一方で、結局夜中に運び込まれることになった。
どうせ来なきゃいけないんだったら、昼間素直に来ておけばここまでひどくなることはなかったんだけどね。結局完全に良くなるまで1週間くらいかかってしまった。
(そのときのいきさつは写真入りで、『ミリタリー・リリシストへの道』に載せているから、そっちを見ておくれ)
こんな経験は二度と勘弁である。
だけど大当たりしたのは、後にも先にもそのときの二回だけ。あとはクジにもいい男にも当たらずに、ここまで来ている。まぁ災難にも当たらずに来ているから、それはそれでとんとんってことなのか。
どうにも小さい人生だなぁ。
|