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2005年4月10日(日)
27.写真の撮り方撮られ方

 1年かかってやっとデジカメの操作を覚えた及川である。と言うより、最近ようやく説明書を読んだってことなのだが。
 今まではとりあえず撮ってパソコンに移す、ということしかしていなかった。設定も買ったときのまま。
 で、説明書を読んだらいろんなことができることに気付いた。もう一生離さない!ってくらい感動してしまった。

 仕事にも使っているんだからもっといいデジカメを買えば、と人に言われるが、新しいものを買えばまた操作を覚えなければいけない。そんな面倒くさいことはできれば避けたい。
 私にはこのPENTAX「OPTIO」(つまりコンパクトカメラ)で充分なのである。

 また、デジカメの操作を覚えたからといって、写真の技術に変化はない。つまり高いカメラを買ったところで、腕は同じということだ。
 とにかく私は、写真を撮ることが苦手である。どんなに努力しても、静止しているものしか撮れない。動いているものを撮ろうとしても、その動きに合わせられないのだ。

 うちには猫が2匹いるが、私が撮った猫の写真はすべて眠っているときのショット。人物写真はすべてカメラ目線のもの。「撮るよ」と声をかけて、静止してもらってからシャッターを切る、という実につまらないものばかりである。
 さりげない仕草、思いがけない表情、なんて絶対に無理だね。
 ましてや「決定的瞬間」を撮るなんて、カメラのファインダーを覗き込んでいる私の目の前に、いきなりミサイルが飛んでくるというような偶然がない限り、夢のまた夢である。

 以前友人の結婚式で、写真の撮影を頼まれたことがある。もちろんちゃんとプロのカメラマンは手配していたのだけど、友人が撮るゆえの「微笑ましいショット」なんてのも欲しかったみたいだ。
 なんで私に頼むんだと思ったが、とりあえずは引き受けた。

 お父さんに手を引かれて入場する花嫁。牧師の前での神妙な姿。指輪交換。ライスシャワーを浴びながら、教会を出ていく幸せな二人…。
 カメラを抱えて一生懸命追いかける。追いかけるのだが、私が写真を撮ろうとするタイミングと、シャッター・チャンスがどうにも合わない。
 そして案の定出来上がってきた写真は、新郎新婦をさえぎるガキの横顔。人の頭で隠れてしまった新郎新婦。前列に座るお母さんの帯にピントがあった写真、などなど。さらには手ぶれも激しく、新宿のイルミネーションを撮ってきたのかというような写真もあった。
 それを見ながら友人は、
「ヒドイね…」
 ただ一言そう言っただけだった。二度と私には写真を頼まないと決心したであろう。また頼まれても、私も困るんだけどさ。

 とにかく写真の神様は、及川には舞い降りてこなかったということである。
 そして、及川も写真の神様を無理矢理引きずり下ろす、などという無謀なたくらみはとっくにあきらめて、相変わらず静止しているものの写真ばかり撮っているのである。

 で、撮るのはダメだが撮られるのは好きかと言うと、もっと苦手である。
 パスポートや運転免許証の写真も、とにかく人に見せるのが恥ずかしいくらいヒドい。まぁ実物も結構ヒドいので、写真ばかりに文句を言えた筋合いではないのかもしれないが。

 このHPの『PROFILE』の中には、亀山哲哉氏が撮ってくれた及川の写真を載せている。
 亀山さんはX JAPANやパーソンズなどビジュアル系を撮ってきた、主に人物写真を得意とするカメラマンなのであるが、その彼をもってして、
「あんた、きらいっ!」
 と言わせたほどの被写体である。

 これを撮影したとき。約250枚くらい撮ったのだが、まともな表情をしていたのはたった2枚だけ。それをさらに、目をあっちから持ってきて口をこっちから持ってきて、気になるシミや皺は消して…、と修正してもらった結果がこれである。
「あなたの表情は三つしかパターンがない」
 つまり、目も口もバカみたいに開いている顔と、目も口も閉じている顔。それに目と口が両方とも半開きになっている顔。
 実物はいろんな表情を持っているのに、なぜカメラを向けると同じ表情しかできなくなるのか。

「目の奥に力を込めるの。そして、目は開いて口は閉じて、その状態で笑った表情を作るのよ」
 そんなこと言われても…。
「頭と肩と腰をまっすぐにしない。全部違う方向に向けるの」
 できるわけがない…。
 普通はどんな素人でも、カメラのシャッター音を聞くうちにだんだん快感が生じてきて、
「あたしは女優よ…」
 となるらしい。そのときに見せるいちばんいい表情を捉えるのが、プロのカメラマンの技だと言っていた。

 私の場合は、シャッター音を聞けば聞くほど緊張が高まってきて、顔はこわばり、体中がぎくしゃくしだす。終いには、早く終われよと怒りだす始末である。
 及川の「いい表情の写真」を撮るのなら、隠し撮りにするか、もしくは望遠レンズを使って遠くから撮るしかない、とも言われた。
 撮るのも苦手だが、撮られるのはもっと苦手だ。

 そういや、先程の「決定的瞬間」について。
 何か「事件」があったとき。たとえば、人が転んだりとか、事故を見掛けたりしたとき。いわゆる、日常の中のちょっとしたハプニングだな。
 ジャーナリストと呼ばれるような人たちは、そういうときにさっとカメラが出てくる。自分の意識より早く、シャッターを切ろうとするみたいである。
 及川はその逆で、とにかく自分の目で見てじっくり確認して、それからモゾモゾとバッグの中を探り、カメラを取り出す。しかも、そのカメラはしっかりケースに入っているので、それをさらにモゾモゾやる。
 その時点ですでに「事件」は終わってしまっていることの方が多い。

 まず自分の目で、という思いが無意識に先に立つのは、これは私が物書きであるからなのだろうか。
 ま、カメラマンやジャーナリストになるのは絶対に無理、ってことで。




 
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